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3.根釧(北海道)

21世紀に向かう根室草地酪農

 <1984年8月18日観測画像>

根室地方の農業は草地酪農が農業の基幹になっており,平成2年の耕地面積109,700ヘクタールのうち97.0%が草地で,牧草約106,800ヘクタール,デントコーン約300ヘクタールを占める。

この草地酪農は昭和40年代,特に45年以降に草地面積の拡大と飼養乳牛頭数の拡大によりめざましく発展した。しかし,草地開発の進んだ最近では草地面積の拡大の余地はなく,一方,乳牛が増頭した結果,経営内容が集約化の傾向に進んだ。

酪農における経営上のポイントは,飼料の自給率を高め,良質粗飼料を確保することによりコスト低減を図ることである。根室酪農の強みはその自給率が高いことであるが,ここ数年牧草のヘクタール収量はやや増大傾向にあるものの39トン程度(平成2年度)にとどまっている。そして,かなり経年化した草地が増え,単に生産性が低下しているばかりでなく質的にも悪化している。

根室地方は夏季に冷涼で夏枯れがなく,草地酪農に適している。しかし,冬期は雪が少なく,牧草は−10〜−20℃の低温と1メートル近い土壌凍結により毎年のように冬枯れを起こす。また火山性土のこの地方では生産力の低下が草種構成に反映するので,これを草地更新の指標にできる。草地の生産力向上のために,とくに冬枯れを防止して草地の永続性を高めることと草種構成の悪化した草地の更新が必要である。

根釧農試,根室管内普及所,農協,役場などの関係機関は生産者と一体となって草地の実態を調査・解析して,技術的改善指針を提示し,管内草地の生産力向上に役立てている。

さらにランドサットデータから得られる次の草地の維持管理に必要な情報は,目に見えることであっても,経時的,くりかえし,広域同時に把握できれば有効であり,この技術の発展に期待している。@採草,放牧の区分,収穫状況,更新状況,春先の融雪状況,防風林の配置,圃場と牛舎の位置関係,A土壌水分,地中温度,腐植含量などとその地域差,B作物の生育状況,草種の判別,収量予測,刈取り適期予測,C沿岸部における夏季の海霧による牧草刈取り,乾草作業にあたえる影響の実態把握,などである。

現在では,低経済成長ならびに輸入乳製品の圧迫,牛乳生産調整等の厳しい社会経済情勢から,粗飼料の生産効率向上や乳牛の個体能力の向上など経営内容を充実する時代に入っている。新しい技術を駆使し,粗飼料生産の確保はじめさまざまな経営努力を重ねることにより,根室草地酪農は内外の困難に打ち勝って21世紀に向かって進んでいくと考える。

福原道一(農業環境技術研究所)
能代昌雄(北海道立根釧農業試験場)

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