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18.会津(福島)

会津の自然と農業

 <1985年6月16日観測画像>

会津地方の総面積は,5.5千平方キロで福島県の40%をしめるが,耕地面積はその7%の41.6千ヘクタールであり,その80%が水田である。画像が観測された6月16日は,田植えの一ヶ月後なので,湛水された水田は黒色に見え,画像左側の会津盆地,右側の猪苗代湖周辺の平坦地は,ほとんど水田であることがよくわかる。

会津盆地は,南北32キロメートル,東西13キロメートル,面積324平方キロであり,会津の名が示す通り,大川を始めとするいくつもの河川が盆地中央で合流する。盆地床の標高は170メートル,盆地北端部の標高は300メートルであるが,標高200メートル以下には黒ボク土および縄文時代の遺跡がみられないなどから,約5000年前は湖沼であったことが指摘されている。会津盆地は,我が国でも有数な水稲の高収量地帯に属する。主な品種はササニシキで,平成2年の平均単収は622キロ/10アールであった。

画像左端を流れる只見川の河岸には,褐色にみえる黒ボク土壌の畑があり,主にタバコが栽培されている。画像の下端から盆地の中央を流れる大川(阿賀川)沿岸には,礫質灰色低地土が分布し,大川の西側の紫色の大部分は,キュウリ,イチゴ,アスパラガスの畑である。盆地西端の段丘上には薬用ニンジンも栽培されている。大川と只見川は合流し,やがて,阿賀野川となって新潟県から日本海に流れる。

猪苗代湖は,面積105平方キロ,最大深度94メートルの大きな湖で,湖の北部の扇状地の中央を流れる硫酸酸性の長瀬川の流入により,湖水のpHは5前後を示す酸性栄養湖である。湖水面の標高は514メートルである。西へは日橋川,東へは安積疏水として流れ,電力発電,上水道,農業用水として利用されている。湖岸にはかなりの面積の泥炭土壌が分布し,水田として利用されている。湖から南に10キロメートルの山中に,褐色の部分がみられるが,標高1000メートル,100ヘクタールの黒ボク土壌の高原大根の畑である。磐梯山(標高1819メートル)は,100年前の爆発の跡を北側に生々しく残し,爆発による噴出物によって堰止められてできた桧原湖などの沢山の湖沼がみられる。磐梯山の西隣の猫魔山の山頂の三日月形の雄国沼は,カルデラ湖である。この北側に点在する畑は,高原野菜の産地で,アスパラガスや大根が栽培されている。

画像の右半分は,磐梯朝日国立公園であり,年間300万人以上の観光客が訪れる。磐梯山と猪苗代湖の間,盆地中央を東西に東北横断高速道が計画されており,郡山市−会津坂下町間は平成4年に開通した。会津地方の冬は連日のように降雪があり,盆地平坦部でも1月の積雪は50センチメートル以上となり12月中旬から3月下旬まで根雪期間があり,水田の高度利用をめざす水田農業確立を推進するには厳しい環境にある。自然と観光と農業の調和が今後の課題であろう。

菅野忠教(福島県農業試験場)

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