58.大分
「一村一品運動」をささえる多様な農林業
<1985年5月2日観測画像>
58.大分
「一村一品運動」をささえる多様な農林業
大分県では,新旧の火山やそれらが河川によって開析された盆地をはじめ,
変化に富んだ地形が展開されている。画像左下に見える九重山の中岳(標高1,
791メートル)は九州本土の最高峰である。周防灘,豊後水道に面した東部
の気候は,比較的温暖少雨(大分:年平均気温15.6℃,年降水量1709
ミリ)で,瀬戸内気候の特徴を持つ。一方,内陸では冬季に気温がかなり低く
なり,九重山周辺の高原地帯では雪が降ることも少なくない。山地地形が広く
展開するために,耕地面積は県面積の約10%程度(78.3千ヘクタール)
に限られている。
画像は大分県の中央部を撮し出している。この地域は,北から南へ北東から
南西に広がる3つの地域に区分される。
第一は,第三紀後半以降の火山及び火山噴出物に覆われた地域である。この
画像では国東半島の南半分,宇佐市内を流れる駅館川流域,耶馬渓をつくり中
津市を流れる山国川流域の東半分が撮し出されている。駅館,山国の両河川が
形成する中津平野は,大分の米の大部分を生産する穀倉地帯となっている。国
東半島両子山の山麓は昭和30年代からミカン園として開発が進められ,県内
の主産地となっている。半島南東部に建設された大分空港(画像右上)は,国
際空港化とともに農産物輸送への貢献も期待されている。近年はここのフライ
トを利用した小ネギ,ミニトマト等の小物野菜の生産が伸びている。
第二は,第四紀火山が連なる地域で,その南北の境は地溝を形成する断層で
限られている。その中に別府湾やその背後の鶴見岳,由布岳,日出生台,九重
連山などの火山,溶岩台地が分布している。この地域が全体的に茶色っぽく見
えるのは,火山荒原の地肌が出ていることと日出生台,由布岳山麓などに展開
する草地の芽生え前の地肌を露出させていることによる。この地域で飼育され
た肉牛は豊後牛として知られている。また,九重山麓の飯田高原では戦後移住
してきた長野県の開拓者によって高冷地野菜の栽培が始まった。ビニールを使
っての雨よけ栽培方式の開発以来生産が伸び,最近は温泉熱や地熱発電を利用
した栽培によって,キャベツ,レタス,トマトなどの生産が行われている。
第三は,九州山地を構成する古生代〜中生代の岩石からなる地域であり,大
野川の流域が撮し出されている。海岸部は埋め立てが進み,大分・鶴崎臨海工
業地帯が形成されている。その背後の大野平野は中津平野につぐ,米の産地で
ある。臼杵,竹田はユズ,ダイダイにならぶ香味料として需要が伸びているカ
ボスの主産地である。
この画像には撮し出されていないが,南東部の津久見はミカンの産地として
有名である。また,北西部の日田は林業の中心都市でスギの優良林業地として
知られている。ここでは,シイタケの栽培も盛んであり,乾燥シイタケの生産
は全国一である。
このように,バラエティーに富んだ自然環境を生かした農業が展開されてい
る。しかし,ここでも減反,食料輸入,過疎化といった日本の農業,農村が抱
える問題に悩まされている。そのような中,地域の特性や資源を活用しながら,
それぞれの地域の顔となる特色ある産品を作り出し,地方の活性化をめざした
「一村一品運動」が展開され効果をあげている。この運動は,その後の国の地
域振興政策にも大きな影響を与えた。
今川俊明(農業環境技術研究所)