独立行政法人 農業環境技術研究所 平成14年度計画
 
 
I 業務運営の効率化に関する目標を達成するためにとるべき措置
 
1 評価・点検の実施
(1)「評議会」の開催
 業務及び運営の改善に資するため、外部委員を加えて、研究所の研究推進方策、研究資源配分、運営管理、研究計画・成果について評価・点検する「評議会」を開催する。また、その結果をインターネット等で公開する。
(2)研究課題の検討会の開催
 研究の推進方策・計画、進捗状況、成果を的確に把握するとともにそれらを評価するため、全ての実行課題を対象に研究所内部で検討会を開催する。このため、「調査研究設計検討会」、「調査研究・成績検討会」、「課題検討委員会」を開催する。また、「主要成果検討会」で成果情報候補を選定する。「課題検討委員会」、「主要成果検討会」には、外部評価委員の意見を入れる。
(3) 業績評価審査委員会の開催
 研究職員の業績評価を行い、その結果を研究職員等の研究の活性化及び資質向上に役立てるため、業績評価審査委員会を開催する。
 
2 研究資源の効率的利用
(1)研究資源の充実
 外部資金獲得の一環として、競争的資金に係る研究費に引き続き積極的に応募する。
(2)高額機器の利用計画
 高額機器の利用計画を作成し、効率的な利用の促進を図る。
 
3 研究支援の効率化及び充実・高度化
(1)研究情報の収集、提供
 農林水産省研究ネットワークを活用して、研究情報の収集、提供の充実強化を図る。
(2)外部委託計画
 アイソトープ施設、精密機器類の保守・管理及び研究本館・実験棟の一般保守管理について、業務の性格に応じて外部委託により効率化を図る。
 
4 連携、協力の促進
(1)他の独立行政法人等との連携、協力
 農業環境研究推進会議を開催して、他の独立行政法人や都道府県の試験研究機関等との連携、協力を積極的に行う。また、農林水産省所管の環境関係研究機関の連絡会「環境研究三所連絡会」に加えて、つくばを中心とした他省庁を含めた9つの環境研究機関との連絡会での連携強化に努め、環境研究の情報交換を促進する。
 
(2)産学官の連携、協力
(1)国内共同研究の実施
 環境省地球環境研究総合推進費による国立環境研究所との共同研究、組換え植物の隔離ほ場試験での他の法人、民間会社及び社団法人農林水産先端技術産業振興センターとの共同研究を行う。また、地域及び都道府県の試験研究機関との連携協力を強め、共同研究の実施をめざす。さらに、民間企業、私立大学との意見交換を行い、連携、協力の方策を探る。
(2)外国との共同研究の実施
 韓国農村振興庁農業科学技術院との共同研究覚書(MOU)を締結したことに基づいて、これまでの共同研究を発展、継続させる。また、中国の研究機関等とのMOUの締結を図るとともに、東南アジア諸国の研究機関との共同研究の可能性を探る。
(3)行政との連携
 農水省大臣官房統計情報部、農村振興局資源課との交流会を継続して行うとともに、農業環境研究推進会議においても行政部局との連携・協力について意見交換を行う。
(4)研究情報の提供
 農業と環境に関する研究情報について「情報:農業と環境」を引き続き毎月発行し、他研究機関及び行政との情報の共有、研究の連携、協力に努める。
 
5 管理事務業務の効率化
(1)会計システムの改善
 会計システムの改善を図る。また、人事管理システム及び健康管理システムの導入を検討する。
(2)情報の公開
 情報公開法の適用に合わせ、法人文書管理システムを導入し、円滑な運用態勢の確立を図る。
 
6 職員の資質向上
(1) 業務上必要な各種の研修に職員を積極的に参加させるほか、必要な研修を実施し、職員の資質向上に努める。また、業務上必要な資格取得を支援する。
(2) 国際研究集会及び国際機関への派遣、国内外への留学等を通して、一層の資質向上をめざす。そのために資金の捻出を図る。
(3) 博士号の取得を奨励し、適切な指導を行う。
(4) 人事院が開発した「公務員倫理を考える」JKETを活用して職員の倫理の高揚を図る。
 
 
II 国民に対して提供するサービスその他の業務の質の向上に関する目標を達成するためとるべき措置
 
1.試験及び研究並びに調査
 
A 農業生態系の持つ自然循環機能に基づいた食料と環境の安全性の確保
1)環境負荷物質の動態解明と制御技術の開発
(1)ダイオキシン類のイネ等による吸収、移行及び特定集水域水田土壌から農業排水系への流出実態の解明
(1)イネ等におけるダイオキシン類の吸収、移行特性の解明
担当:化学環境部・環境化学分析センター
研究計画:イネ及びトウモロコシにおけるダイオキシン類濃度及び組成の経時変動を解明する。また、化学資材、植物酵素、光分解及び光触媒を用いたダイオキシン類の分解機構の解明並びに現地適用の最適化条件を検討する。
(2)牛久沼集水域における水田から農業排水系へのダイオキシン類の流出実態の解明
担当:化学環境部・地球環境部・生物環境安全部・環境化学分析センター
研究計画:牛久沼全域の底質中のダイオキシン類濃度分布と賦存量を把握し、流出・流下パターンのモデル化を行う。また、農作業・降雨等に伴うダイオキシンの流出の抑制法並びに凝集剤の土壌粒子分散抑制の効果を定量的に評価する。
 
(2)カドミウム等微量元素の土壌集積経路及びイネ・ダイズ子実への移行過程の解明
(1)カドミウム等の土壌中における存在形態と吸収抑制機構の解明
担当:化学環境部・農業環境インベントリーセンター
研究計画:土壌中のカドミウム濃度と玄米中含有量との関係を現地のカドミウム汚染水田等を対象に調査・研究する。また、土壌、作物等の微量重金属デ−タベ−スを作成し、可給性カドミウムの実態解析を進めると共に、室内実験でも引き続き検討する。
(2)農耕地におけるカドミウム等負荷量の評価とイネ・ダイズ等による吸収過程の解明
担当:化学環境部・環境化学分析センター
研究計画:長期連用土壌のカドミウム等重金属含量を解析する。最上川水系のカドミウム等重金属濃度を明らかにする。また、トレ−サ−を用いて、土壌及び作物中のカドミウムの動態を解明する。
(3)カドミウム吸収能の低いイネ・ダイズ品種の検索
担当:化学環境部
研究計画:カドミウム吸収・蓄積能の品種間差異を現地の汚染水田で調査・確認する。また、栽培条件がカドミウム吸収に及ぼす影響についても検討する。さらに、ダイズ根のカドミウム吸着機構及び土壌からの流出量を評価する。
 
(3)土壌・水系における硝酸性窒素等の動態解明と流出予測モデルの開発
(1)硝酸性窒素等の土層内移動の解明
担当:化学環境部
研究計画:浅層地下水位の面的変動並びに硝酸性窒素濃度を定期的に観測し、黒ボク土畑土壌から溶脱する硝酸性窒素の地下水到達経路と到達率を推定する。
(2)各種資材等の評価による負荷軽減技術の開発
担当:化学環境部
研究計画:市販の土壌団粒形成促進材よりも硝酸イオン吸着能の高い資材を開発するとともに適切な利用法を提示する。また、窒素、リンの収支を作物栽培法別に整理し、インベントリーとして公表する。さらに、有機態窒素化合物(PEON)吸収性の高い作物を選定する。
(3)硝酸性窒素の中規模流域におけるモニタリング手法の開発
担当:化学環境部
研究計画:各種懸濁態窒素の水質トレーサーとしての安定性を解析・評価する。また、モデル畑地排水系における形態別窒素の濃度変動を調査し、系外への窒素排出量を推定する。
(4)硝酸性窒素の負荷流出予測モデルの中規模流域への適用
担当:化学環境部
研究計画:愛知県矢作川流域の窒素流出に関与する100項目の電子ファイル化されたフレーム値と水質の長期観測データを基に、流域特性値と水質の関係を定量的に評価する。
 
(4)難分解性有機化合物分解微生物の分解能解析技術の開発及び汚染環境中への分解菌接種技術の開発
(1)クロロ安息香酸分解菌等の分解能解析技術の開発
担当:化学環境部
研究計画:クロロ安息香酸分解菌及び2,4-D分解菌の分解経路下流の初発酸化反応を担うクロロカテコールジオキシゲナーゼ等の酵素について、大腸菌での発現等により、基質特異性等を解析する方法を確立する。
(2)木質炭化素材を用いたトリアジン系除草剤汚染環境への分解菌接種技術の開発
担当:化学環境部
研究計画:単離したシマジン分解菌を用いてシマジン分解代謝経路を推定する。また、分解菌の野外使用のために、シマジン以外の炭素・窒素源を添加した場合の分解特性、低温域での分解特性及び他のトリアジン系農薬の分解能を解析・評価する。
 
(5)農薬の水生生物等に対する影響評価法の開発
(1)水田用除草剤の水系における拡散経路の解明と藻類等水生生物に対する影響評価法の開発
担当:化学環境部・環境化学分析センター
研究計画:開発したLC/MS/MS多成分高感度分析法について、連続100サンプルの分析を可能にするための改良を行う。これらの方法を用いて河川・湖沼におけるスルホニル尿素系除草剤等、約15種の薬剤濃度の季節変動実態を明らかにする。
(2)新規資材による生体防御機能等の活性化機構の解明
担当:化学環境部
研究計画:キュウリ、ナシの病害抵抗性及びその誘導と活性酸素関連酵素、PGIPとの関係を明らかにする。また、抵抗性誘導資材と耐病性品種との併用効果を検討する。
 
2)人為的インパクトが生態系の生物相に及ぼす影響の評価
(1)遺伝子組換え生物による生態系かく乱機構の解明と影響評価手法の開発
(1)組換え作物の栽培が農業生態系における生物相に及ぼす影響評価並びに導入遺伝子の拡散に関する遺伝学的解析手法の開発と遺伝子拡散の実態解明
担当:生物環境安全部
研究計画:Pseudomonas syringae群細菌と他の細菌の間で遺伝子交換を引き起こす原因となりうるゲノム構造を、本群菌ゲノム上のファゼオロトキシン産生遺伝子群等に着目して探索・解析する。
 
(2)導入寄生蜂等による生態系かく乱の実態とかく乱機構の解明
(1)ハモグリバエ等に対する導入寄生蜂等が非標的昆虫に及ぼす影響の評価
担当:生物環境安全部
研究計画:マメハモグリバエの4種寄生蜂における導入-土着種間の競争関係を世代間シミュレーションモデルにより解析し、クリタマバチの寄生蜂間の類縁関係を核DNAの分子マーカー等を利用して解明するとともに、導入-土着種間の交雑性を経時的に追跡する。
 
3)農業生態系の構造と機能の解明
(1)環境要因が微生物の増殖、個体群変動に及ぼす影響の解明
(1)土壌微生物相等の要因が菌核性糸状菌等の動態に及ぼす影響の解析
担当:生物環境安全部
研究計画:随伴Trichoderma属菌や土壌微生物が紋羽病菌の生育に及ぼす影響を検討するとともに、紋羽病菌から病原性低下因子を検出する。また、白絹病菌の菌核に付着している細菌群集をrDNAの比較により解析する。
(2)微生物及び植物の二次代謝物等が微生物の増殖に及ぼす影響の解析
担当:生物環境安全部
研究計画:Pseudomonas属細菌等が産生する二次代謝物について、植物根圏に生息する細菌群や特定菌種の増殖等に及ぼす影響を解析する。また、物質産生に関与する遺伝子を検索し、産生性との関連を調べる。
 
(2)昆虫の個体群動態に及ぼす餌資源、昆虫放出物の影響の解明
(1)寄主植物の空間分布がハムシ等の個体群動態に与える影響の解析
担当:生物環境安全部
研究計画:寄主植物の空間配置(数十〜数百メートル規模)がブタクサハムシ個体群の動態及び分散に与える影響について、野外実験を行い明らかにする。
(2)カメムシ、ハマキガ等の放出物が周辺昆虫に及ぼす影響の解明
担当:生物環境安全部
研究計画:ツヤアオカメムシ及びハイマダラノメイガのモニタリングに利用するための誘引製剤を開発する。チャノコカクモンハマキに対する交信かく乱を室内で検定する方法を開発する。
 
(3)農業生産活動が農業生態系の生物群集の構造と多様性に及ぼす影響の評価
(1)スルホニルウレア系水田除草剤施用が水田周辺の植物群落の種多様性に及ぼす影響
担当:生物環境安全部
研究計画:絶滅危惧水生シダ(サンショウモ、デンジソウ、オオアカウキクサ、ミズニラ等)を用いて、スルホニルウレア系除草剤への暴露量を変えて半数致死量、半量生育量等を調査し、除草剤の影響を定量化する。
(2)カテコール関連化合物を放出する植物の導入が周辺の植物や土壌環境に及ぼす影響解明
担当:生物環境安全部
研究計画:カテコール関連物質等の化学生態的活性物質の生物検定法を開発する。この手法を利用して、導入・侵入植物の化学生態的安全性の評価手法を検討し、野生植物や植物園からの導入植物種を供試して活性を測定する。
(3)農地管理形態の変化に伴う農地及び周辺植生の変動予測
担当:生物環境安全部
研究計画:休耕田等を対象とした植生調査及び地理情報データの解析により、水辺環境の自然立地区分を行う。類型化した農業生態系について、森林が優占するクラスを大別し、各クラスの生態系の特徴を解析する。
 
(4)畑地及びその周辺に生息する線虫の動態解明
(1)畑地及びその周辺に生息する線虫の属・種構成の解明並びに昆虫病原性線虫等の特性解明
担当:生物環境安全部
研究計画:不耕起堆肥連用圃場の土壌線虫について、細菌食性線虫など5種以上の新種記載・再記載を行う。また、様々な温度条件での昆虫病原性線虫の殺虫活性、増殖能力、生残能力の評価、人工培養法の検討を行う。
 
B 地球規模での環境変化と農業生態系との相互作用の解明
1)地球規模の環境変動が農業生態系に及ぼす影響解明
(1)地球規模の環境変動に伴うコメ生産地域の生産力変動予測手法の開発
(1)地球規模の環境変動に伴う生育阻害要因を考慮した東アジアのコメ生産力の変化予測
担当:地球環境部
研究計画:水稲栽培地域における生育阻害要因の時間的変動を解析する。また、気候変動が、栽培条件、水資源分布、害虫発生分布等に及ぼす影響について、統計的な手法やリモートセンシングデータを用いて定量化し、地域特性をマップ化する。
 
(2)気候変化、二酸化炭素の濃度上昇に伴う農業生産への影響の解明
(1)気候変化や二酸化炭素の濃度上昇による農業気候資源量の変動特性の解明と影響評価法の開発
担当:地球環境部
研究計画:河道流下モデルと流域流出モデルを結合し、気候値から灌漑に使用可能な河川流下量を推定する。また、灌漑モデルのコーディングを行い、各種パラメータ値を決定する。さらに、中国とインドシナ半島の作付け分布図を完成させる。
(2)二酸化炭素の濃度上昇がアジアのコメ生産性に及ぼす影響のモデル化
担当:地球環境部
研究計画:中国FACEで観測を行い、日本とは異なる環境下でのCO2濃度上昇が植物生育と微気象に及ぼす影響を解明するとともに、日本でのチャンバー実験により、高CO2濃度によるイネ光合成促進に窒素量が影響するメカニズムを解明する。
 
(3)気候変化が生態系のフラックス変動に及ぼす影響の解明
(1)農耕地や自然生態系におけるフラックス変動の評価
担当:地球環境部
研究計画:アラスカのツンドラにおける二酸化炭素およびメタンフラックスの3年間の観測データを解析し、温室効果ガス収支の季節変化及び年々変動の特徴を明らかにする。
 
2)農業が地球環境に及ぼす影響解明と対策技術の開発
(1)農業活動が温室効果ガスへ及ぼす影響解明と対策技術の開発
(1)農地の利用形態と温室効果ガス等の発生要因の関係解明及び発生抑制技術の開発
担当:地球環境部
研究計画:水田の水稲栽培期間および非栽培期間を含めた年間の温室効果ガス発生量を測定するとともに、ガス間のトレードオフ関係を明らかにする。また、国内における稲わら等農作物残さの焼却による温室効果ガス等の発生量を推定する。
 
(2)農業生態系における炭化水素、花粉、ダスト等大気質の放出・拡散過程の解明
(1)農業生態系における炭化水素、花粉、ダスト等大気質の放出・拡散過程の解明
担当:地球環境部
研究計画:トウモロコシ花粉と風送ダストについて、拡散過程と気象条件(風向、風速、気温等)を調査し、トウモロコシでは交雑に与える気象条件の影響を明らかにし、風送ダストでは風速や気圧変動等がダスト発生に及ぼす影響を定量化する。
 
(3)人間活動に伴う環境変動が農業生態系における物質循環及び空間構造の特性に及ぼす影響の解明
(1)窒素負荷の増大等による農業生態系の酸性化と窒素等の動態把握手法の開発
担当:地球環境部
研究計画:土壌中の窒素動態とN2O発生を調査し生態系内の窒素循環を定量化する。また、実測データによって、土壌有機物分解や森林の物質循環に関する既存のモデルの適用性を検討する。さらに、東アジアの窒素化合物の排出量、負荷量を明らかにする。
(2)物質収支算定システムの構築と環境負荷の定量化手法の開発
担当:地球環境部
研究計画:輸入が急増した品目に関わる農業関連情報を収集し、養分収支算定システムの精度向上を図る。また、地域バイオマスエネルギー生産システムの研究事例に関し、LCA及び経済性評価のためのデータベース化を進める。
(3)GISを活用した農業生態系の空間構造変動の定量的把握手法の開発
担当:地球環境部
研究計画:南茨城の迅速測図を環境庁の現存植生図と重ねあわせ、1880年代と1970年代の間に稲敷台地上で生じた平地農業環境における林地、草地、農地及び住宅地等の土地利用の変化を定量的に把握する。
(4)中国における砂漠化に伴う環境資源変動評価のための指標の開発
担当:地球環境部、生物環境安全部、環境化学分析センター
研究計画:中国内モンゴルにおける砂漠化地域2地点において、環境資源のモニタリングを実施するとともに、各地域に特徴的な砂漠化プロセスを説明する指標群を抽出、選定し、環境資源変動との関係を解明する。
 
C 生態学・環境科学研究に係る基礎的・基盤的研究
1)環境負荷物質の分析技術の高度化
(1)農業環境中におけるダイオキシン類等化学物質の超微量分析法の高度化
(1)塩素化ダイオキシン類等有機化学物質の超微量分析法の開発
担当:環境化学分析センター、化学環境部
研究計画:ゲル層浸透クロマトグラフ法を用いて葉緑素、ポリフェノール等の分析妨害物質とダイオキシン類とを簡便に分離精製する方法を開発する。
(2)農業環境中のカドミウム等の超微量分析法の開発
担当:環境化学分析センター、化学環境部
研究計画:環境負荷の観測のため、生物により固定された鉱物中のカドミウム等重金属類の分布をLA(レーザーアブレーション)−ICP−MSシステムを用いて測定する手法を開発する。
 
(2)作物・農耕地土壌における137Cs等放射性同位元素のモニタリング
(1)リスク評価のための137Cs等放射性同位元素の平常時モニタリング
担当:環境化学分析センター、化学環境部
研究計画:137Csや90Sr等の放射性同位元素、フッ素及びヨウ素の農業環境における濃度レベルを把握する。また、臭素同位体の土壌中の挙動および土壌有機物中の金属元素標識物の安定性を放射化分析等により明らかにする。
 
2)環境資源情報の計測・解析技術の高度化
(1)農業生態系の広域的計測手法及び多変量解析手法の高度化
(1)衛星情報のデータベース化と画像解析手法の高度化
担当:地球環境部
研究計画:多バンド合成開口レーダおよびハイパースペクトル放射計等の新規センサの植物群落に対する反応特性を明らかにし、これらの特性を用いた植生調査手法を開発する。
(2)リモートセンシングによる植被動態の広域的検出・評価手法の開発
担当:地球環境部
研究計画:植被の量的・構造的特性と光・電磁波リモートセンシングデータとの関係の解明並びにそれらの特性を遠隔計測するための基礎手法の開発を行う。また衛星データ等による生態系の変動に関する情報収集・評価に取り組む。
(3)環境資源・環境負荷データの分類手法及び多変量解析手法の開発
担当:地球環境部
研究計画:多次元正規分布確率計算、及びDVIモデル構築のためのコンピュータプログラムを作成する。また、系統解析における形質状態復元手法について複数のモデルを基にしたコンピュータシミュレーションを行い、モデルの特徴を評価する。
 
3)農業環境資源情報の集積
(1)農業環境資源の分類・同定及び機能の解明に基づくインベントリーフレームの構築
(1)機能に基づく土壌の分類及びインベントリーのためのフレームの構築
担当:農業環境インベントリーセンター
研究計画:土壌情報入出力システムと土壌分類プログラムを完成させる。土壌インベントリーに取り入れるべき要素を整理する。また、既存の分類法を整理し、機能に基づく土壌分類の体系化を開始する。
(2)所蔵タイプ標本等のデータベース化及びインベントリーのためのフレームの構築
担当:農業環境インベントリーセンター
研究計画:コウチュウ目キクイムシ類のタイプ標本について画像情報の取得を完了する。チョウ目ヤガ科30種及び小蛾類各科の幼虫識別形質を抽出する。カメムシ目ヒョウタンカスミカメ族に含まれる種の識別法を確立する。
(3)主要イネ科植物に常在する微生物相の分類、同定及び機能解析並びにインベントリーのためのフレームの構築
担当:農業環境インベントリーセンター
研究計画:イネ及びイネ科牧野草の葉鞘及び籾等から、経時的に微生物(細菌、糸状菌)を分離し、分離頻度の季節的変動の調査及びrDNA等による分類・同定を行う。また、分離した微生物の窒素固定能等の機能を調べる。
 
(2)昆虫・微生物の収集・特性評価とジーンバンク登録
 独立行政法人農業生物資源研究所が実施するジーンバンク事業に参画し、サブバンクとしてセンターバンク(独立行政法人農業生物資源研究所)と連携しつつ当該生物の収集・評価及び保存を行う。また、適当と認められた遺伝資源については、随時、センターバンクに移管する。
担当:生物環境安全部、農業環境インベントリーセンター
研究計画:昆虫については、新規導入3種、新規登録3種・系統、特性評価65項目を実施する。微生物については、204株を収集・保存し、109特性について544株調査し、のべ3,156特性を評価する。
 
4)公立試験研究機関等との研究協力
 指定試験事業及び国の助成により公立機関等が実施する研究への支援等の協力を行う。
 
2 専門研究分野を活かした社会貢献
(1)分析、鑑定
 行政、各種団体、大学等の依頼に応じ、高度な専門的知識が必要とされ、他の機関では実施が困難な分析、鑑定を実施する。その中で、国際機関等に提出するデータについては、その精度管理を検討する。
 
(2)講習、研修等の開催
(1)講演会・シンポジウム等の開催計画
 農業環境シンポジウムをはじめ、気象環境研究会、土・水研究会、有機化学物質研究会、農薬環境動態研究会、植生研究会等のシンポジウム、研究会を開催する。また、研究所主催の国際会議を開催する。
(2)研修生の受け入れ
 他の独立行政法人、大学、国公立機関、民間等の研修生を積極的に受け入れ、人材育成、技術水準の向上、技術情報の移転を図る。また、海外からの研修生を積極的に受け入れる。
(3)外部に対する技術相談
 企画調整部研究企画科を技術相談窓口として外部からの技術相談に対応する。また、統計解析指導、昆虫同定等を実施する。
 
(3)行政、国際機関、学会等への協力
 わが国を代表する農業環境研究に関わる研究機関として、行政機関の専門・評価委員会、国際機関の委員会・会議、国際協力事業団、学会等へ職員を派遣するとともに、政府の行う科学技術に関する国際協力・交流に協力する。
 
3 成果の公表、普及の促進
(1)成果の利活用の促進
(1) 研究成果の中で行政、他研究機関及び生産現場等に利活用できる成果(普及に移しうる成果)を評価のうえ選定し、普及を図る。また、農業環境研究成果情報を発行する。
(2) 行政、他研究機関及び生産者等が利用可能な各種のマニュアル、データベース等を作成する。
 
(2)成果の公表と広報
(1) 4月に外部向け研究成果発表会を開催する。また、研究成果については国内外の学会、シンポジウム等で180件以上の発表を行うとともに、150報以上の論文を学術雑誌、機関誌等に公表する。
(2) 農業環境技術研究所報告、農業環境技術研究所資料、農業環境技術研究所叢書を発行し研究成果の公表を行うとともに、農業環境技術研究所年報、英文年報及び農業環境技術研究所ニュースを発行し研究活動の積極的な広報を行う。
(3) 研究成果については、その内容をインターネットや「つくばリサーチギャラリー」、「土壌モノリス館」、「昆虫展示室」の展示等を通じて公開に努めるとともに、主要な成果に関しては、適宜マスコミに情報を提供する。
 
3)知的所有権等の取得と利活用の促進
(1) 知的所有権の取得に努める。また、海外で利用される可能性、わが国の農林水産業等への影響に配慮して、特許等の外国出願に努力する。
(2)取得した知的所有権に係る情報提供はインターネットを通じて行うとともに、研究成果移転促進事業等を活用し、知的所有権の利活用を促進する。
 
 
III 予算(人件費の見積りを含む。)、収支計画及び資金計画
 
1 予算
 
平成14年度予算
(単位:百万円)

























 
区     分 金  額
   
収入
  運営費交付金
  施設整備費補助金
  無利子借入金
  受託収入
  諸収入
   版権及特許権等収入
   その他の収入

  計
 

3,485
159
960
765




5,371
 
   
支出
  業務経費
  施設整備費
  受託経費
   試験研究費
   管理諸費
  一般管理費
   研究管理費
   管理諸費
  人件費

  計  

966
1,119
765
695
70
422
106
316
2,099

5,371

























 









 










 
 
 
2 収支計画
 
平成14年度収支計画
(単位:百万円)
























 

区     分

金  額

費用の部
 経常費用
  人件費
  業務経費
  受託経費
  一般管理費
  減価償却費
 財務費用
 臨時損失

収益の部
 運営費交付金収益
 諸収入
 受託収入
 資産見返運営費交付金戻入
 資産見返物品受贈額戻入
 臨時利益

純利益
目的積立金取崩額
総利益

 

4,219
4,219
2,099
868
649
423
180



4,219
3,388

649
55
125





 






 
 









 
 
 
 
 
3 資金計画
 
平成14年度資金計画
(単位:百万円)




















 

区     分

金  額

資金支出
 業務活動による支出
 投資活動による支出
 財務活動による支出
 次期中期目標の期間への繰越金

資金収入
 業務活動による収入
  運営費交付金による収入
  受託収入
  その他の収入
 投資活動による収入
  施設整備費補助金による収入
  その他の収入
 財務活動による収入
  無利子借入金による収入
  その他の収入

 

5,371
4,039
1,332



5,371
4,252
3,485
765

159
159

960
960

 












 
 







 
 
 
 
W その他農林水産省令で定める業務運営に関する事項
 
1 施設及び設備に関する計画
 侵入昆虫・導入天敵隔離飼育室を新築する。
 環境研究拠点支援施設の改修を行う。
 環境生物影響解析実験棟の改修を行う。
 
2 人事に関する計画(人員及び人件費の効率化に関する目標を含む。)
1)人員計画
(1)方針
 管理業務の効率化に伴う適切な職員の配置に努める。また、重点研究領域への職員の重点配置等を行うことにより、研究業務の効率的、効果的な推進を行う。
 
(2)人員に係る指標
 常勤職員数については、年度初めは197名とし、年度末は196名とする。
 
2)人材の確保
(1)職員の新規採用については、国家公務員採用試験の活用及び選考採用により行う。
(2)研究職員の採用にあたっては、任期付任用制及び公募制による採用計画を策定する。
(3)中期目標達成に必要な人材を確保するため、ポストドクター等を受け入れる。
 

 

 
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