農業環境技術研究所法人情報法定公開情報情報公開

独立行政法人農業環境技術研究所 平成22年度計画

第1 業務運営の効率化に関する目標を達成するためとるべき措置

1.評価・点検の実施と反映

(1) 平成22年3月に開催した評議会の評価を踏まえ平成21年度実績にかかる自己評価を決定し、平成21年度業務実績報告書とあわせ6月に独立行政法人評価委員会(農業技術分科会)に提出する。「国の研究開発評価に関する大綱的指針」改定の趣旨を踏まえ、国際的ベンチマークを試行する。

平成22年度及び第2期中期目標期間の業務実績評価については、リサーチプロジェクト(RP)ごとに設計検討会、成績検討会を行う。設計検討会では、平成20年度に実施した研究課題の重点化方向及び評議会の評価結果も踏まえ、第2期の成果をとりまとめるよう研究計画(工程表)を設定する。平成23年2月までに外部評価委員が参加した課題評価会議を行う。3月に業務全般に関する所内メンバーによる自己評価会議、外部専門家・有識者で構成する評議会を開催し、自己評価案を作成する。

次期中期計画の設定等に向け研究課題、組織、施設・設備等の検討を行う。

(2) 課題評価会議における小課題の評価は、研究予算や研究エフォート等の研究資源の投入量、「普及に移しうる成果(候補)の数」、「知的財産権の数」、「論文の数」等の定量的指標及びこれらの分析結果を活用して実施する。研究成果の追跡調査については、普及に移しうる成果のフォローアップに加え、独法化後の主な研究成果とその活用や社会貢献の状況を整理して平成21年度に作成した「農環研における研究の流れ」(未定稿)を完成させ、中期目標期間の業務実績評価の参考資料とする。

(3) 課題評価会議の評価結果は翌年度の小課題への運営費交付金配分等に反映させる。評議会の評価結果は翌年度の年度計画等に反映させる。独立行政法人評価委員会の評価結果については9月を目途に反映方針を策定し、業務運営に反映させる。なお、小課題強化経費、小課題連携強化費などの研究推進費(運営費交付金)の課題採択等は平成20年度に実施した研究課題重点化点検の結果を踏まえ行う。

(4) 研究職員の業績評価については、平成21年度業績評価を5月完了を目途として実施し、その評価結果を平成22年度の処遇(勤勉手当)に反映させる。また、平成23年3月までに平成22年度業績評価作業を開始する。研究管理職員の業績評価については、前年度と同様の方法で実施し、処遇に反映させる。一般職員及び技術専門職員の評価制度については、平成21年度に実施した試行結果の検証を踏まえ検討し、導入する。

2.研究資源の効率的利用及び充実・高度化

(1) 研究資金

(1) 運営費交付金については、平成20年度に実施した研究課題の重点化の方向や課題評価結果等に基づき重点的な配分を行い、競争的環境の下で効率的・効果的な研究の推進を図る(1−(3)参照)。

(2) 農林水産省、環境省、文部科学省等から受託している継続プロジェクト研究や調査等を重点的に実施する。また、研究所のミッションに即した新たな研究公募等があった場合は積極的に応募する。

(3) 各種公募型外部資金の応募時期の周知や提案書類の書き方に関する説明会を実施し、競争的資金やその他の公募型研究資金に積極的に応募する。その際、領域長・センター長及び所の「予算管理・運営委員会」が応募研究計画のブラッシュアップを行う。

(2) 研究施設・設備

研究用別棟の維持コストの抑制と安全管理強化のため平成21年度に変更した研究用別棟の利用申請、利用報告を確実に行い、別棟利用の集中化に向けた具体的な方針を作成する。引き続き、利用計画のない期間における外部貸付けが可能な施設・設備等のウェブサイト公開を行う。高額機器等の購入に際しては、次期以降の研究上の必要性を十分考慮するとともに所内の共同利用を原則として計画的な導入を図るとともに、保守費については、妥当性を精査する。

(3) 組織

化学薬品等の安全管理の強化のため、安全管理専門役を振り替え安全管理室を設置する。また、研究情報管理の強化等のため、研究情報システム専門役を振り替え研究情報システム管理室を設置する。

(4) 職員の資質向上と人材育成

(1) 人材育成プログラムに基づき、各研究職員のキャリアデザインの作成、研究管理者との面談、達成度の確認を実施するとともに、研修や指導・教育による人材育成を図る。

また、次期中期目標期間に適用する「研究開発力強化法」の趣旨を踏まえた人材活用方針(案)を作成する。

(2) 研究職員の平成21年度の業績評価結果を平成22年度の処遇(勤勉手当)に反映する(1−(4)参照)。また、農環研若手研究者奨励賞を活用し、業績を上げた若手研究職員及び農環研特別研究員の表彰を行う。

(3) 研究職員のキャリアデザインの作成において、若手については研究管理職が十分な指導を行う。特に学位未取得者に対しては取得を奨励する。また、国際研究集会及び国際機関への若手の派遣を積極的に行い、国際経験の蓄積を図る(5−(3) 参照)。

(4) 多様なニーズに対応した研究推進及び研究経営の能力の高い研究管理職員を養成するため、研究マネージメント等の研修に研究管理職員を参加させる。

(5) 一般職員及び技術専門職員が高度な専門技術・知識を要する業務を行うために必要な資格取得や能力獲得を引き続き支援する。特に、企業会計の知識習得のため簿記資格取得の研修を実施するとともに、向上意識のある自発的な者に対しても外部研修関係への参加の支援を積極的に行う。また、各種教育プログラムに参加させ、資格取得を支援する。また、研究職員の研究ポテンシャルの一層の向上のため統計・GIS(地理情報システム)研修等を行う。

3.研究支援部門の効率化及び充実・高度化

(1) 「業務効率化推進委員会」においては、引き続き管理部門における業務内容の見直しを行い、コンプライアンスに留意しつつ、効率的な事務・業務の実施体制を確保するとともに、事務処理の迅速化、簡素化、文書資料の電子媒体化による情報の伝達、共有等を進め管理事務業務の効率化を図る。また、契約については契約監視委員会における指摘事項等に対する見直しの具体的内容に取り組み競争性と透明性の確保を図る。

(2) 技術専門職の業務については、遺伝子組換え作物の栽培試験、ビオトープ管理及び環境資源試料の採取等高度な専門技術・知識を要する分野に重点化し、それ以外の業務を契約職員等の対応とすることにより、前年度から1名の減員に対応した業務計画を策定し実施する。

(3) 研究本館・実験棟の施設・設備の運転保守管理、アイソトープ施設等の保守管理業務等については、 引き続き業務の外部委託を行う。また、精密機器類の保守管理については、予算の効率的執行と精密機器類の利用状況を総合的に判断し、外部委託による保守契約等の内容の見直しを引き続き行い、保守管理費の削減を図る。

(4) 業務ごとの年間作業スケジュールを4月に作成し、常勤職員の業務、契約職員の業務、アウトソーシングする業務の確認を行う。引き続き事務処理等の点検を実施し、処理の迅速化及び簡素化並びに文書資料の電子化等による業務効率化を図る。

(5) 農林水産省研究ネットワーク(MAFFIN)等のインターネットサービスシステムを活用して研究情報の 収集・提供業務の効率化、充実・強化を図るとともに、所内グループウェア及び研究管理データベースシステムの活用により運営・管理業務の効率化に努める。

4.産学官連携、協力の促進・強化

(1) 農林水産省所管の独立行政法人とは、「農林水産省所管の農林水産業に関する試験研究を主たる業務とする独立行政法人間で実施する研究協力に関する協約書」に基づき、研究者の交流を含めた円滑な研究協力を推進する。

また、その他の独立行政法人、国公立試験研究機関、大学及び民間等とは、セミナー、研修等の開催、研究員の派遣、依頼研究員制度や技術講習制度を活用して交流を図るとともに、共同研究契約を締結して、共同研究を積極的に進める。

民間との新たな共同研究の仕組みとして整備した資金提供型共同研究を的確に運用し、研究開発の促進に努める。

さらに、インターン制度を活用して、学生に職業体験教育を実施するとともに、学生による農業環境研究の理解を促進する。

(2) 農業環境技術研究所連携推進会議を開催し、農林水産省所管の独立行政法人、行政部局、公立試験研究機関、大学、民間企業等の参加を求め、情報の交換を図るとともに、連携・協力を積極的に行う。農業・林業・水産業の環境に関する研究所(農業環境技術研究所・森林総合研究所・水産総合研究センター)の間で設立した「三所連絡会」を開催する。さらに、農林水産省、環境省、文部科学省、経済産業省等の環境関係の研究機関で結成している「環境研究機関連絡会」による成果発表会を開催し、相互の連携・協力を推進する。

(3) 東京大学大学院との連携講座及び筑波大学及び東京農業大学との連携大学院に関する協力協定に基づく教授等の選任と大学院生の受入によって、教育・研究交流を発展させる。また、教育・研究に関する協定を結んでいる鯉渕学園と、研究員の派遣によって連携を強化する。研究連携の推進に関する協定を締結している豊橋技術科学大学とは、研究員の派遣と実務訓練生の受入により引き続き研究協力を推進する。

(4) 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構が行う多様な専門知識を融合した総合的な研究及び独立行政法人国際農林水産業研究センターが実施する国際共同研究に必要に応じて協力する。

5.海外機関及び国際機関等との連携の促進・強化

(1) モンスーンアジア農業環境研究コンソーシアム(The Monsoon Asia Agro-Environmental Research Consortium、略称MARCO)の参画研究機関との共同研究、研究者や情報の交換により、参画機関との連携強化を図る。MARCOの活動の一環として、アジア太平洋食料肥料技術センター等との共催で機能的生物多様性に関する国際セミナーを実施する。また、農業分野からの温室効果ガスに関する世界的研究ネットワーク(グローバル・リサーチ・アライアンス)の取り組みへの貢献を図る。

(2) 共同研究覚書(MOU)を締結した韓国農村振興庁農業科学技術院、中国科学院南京土壌研究所、また平成21年度に新たにMOUを締結したペルーアマゾン研究所、ペルーラモリナ農業大学などの機関と、共同研究、研究者の交流などにより、研究協力を継続、発展させる。また、ボン大学ZEF(The Center for Development Research)、ニュージーランド・ランドケアリサーチリミテッド等の関係研究機関と、研究者の交流により研究協力を推進する。

(3) 研究者の国際経験の蓄積を図るため、国際研究集会及び国際機関への派遣を積極的に行う。特に、経済協力開発機構(OECD)国際共同プログラム、JSPS研究者海外派遣基金優秀若手研究者海外派遣事業等の研究者交流制度及び所の制度の活用等により、2名以上を在外研究に派遣する。

また、日本学術振興会の「外国人招へい研究者制度」など第三者制度による招へいやMARCOの活動の一環としての交付金による外国人招へい経費等を活用して、国際的な人的交流を促進する。

第2 国民に対して提供するサービスその他の業務の質の向上に関する目標を達成するためとるべき措置

1.試験及び研究並びに調査

A 農業環境のリスクの評価及び管理技術の開発

1) 農業生態系における有害化学物質のリスク管理技術の開発

(1) 農業環境中における有害化学物質のリスク評価手法及びリスク管理技術の開発

リスク低減技術については、50%メタノール・水を用いた土壌抽出法のカボチャ果実中ヘプタクロル類濃度予測への適応性を検証するとともに、ズッキーニによるDDT類、HCH類等のシクロジエン系以外の残留性有機汚染物質(POPs)の吸収除去能力を評価する。また、ディルドリン分解糸状菌の能力を実汚染土壌で評価する。リスク評価技術については、東アジア地域におけるPOPs様物質の大気中濃度のモニタリングを継続し、発生源および移流拡散の推定を行う。また、GIS情報結合型 Paddy-Large モデルと生物影響評価を組み合わせた農薬の河川生態系への影響評価手法を開発する。

作物汚染リスク評価手法の開発では、ダイズ、小麦子実カドミウム汚染リスク予測式及び玄米ヒ素汚染リスク予測式を開発する。リスク低減技術では土壌からのヒ素・カドミウムの溶出を抑制する資材を選定する。土壌修復技術では、転換畑における洗浄効果の持続性検証及び洗浄現場の各種変動要因を考慮した生態リスク評価、ファイトレメディエーションを行っている転換畑の化学形態別カドミウム濃度変化の把握を継続して行う。低吸収性品種の利用技術等ではヒ素やカドミウム濃度の低い稲変異体を選抜する。カドミウム汚染土壌管理マニュアルを作成する。

2) 農業生態系における外来生物及び遺伝子組換え生物のリスク管理技術の開発

(1) 外来生物及び遺伝子組換え生物の生態系影響評価とリスク管理技術の開発

外来緑化植物の分布域を解明しススキ、ヨモギ等の遺伝的変異を解明する。ナガエツルノゲイトウの水田域における分布拡大要因を調査する。遺伝マーカーを用いて除草剤抵抗性ボウムギの実態調査を行う。外来緑化植物の他感物質によるリスクと土壌の化学的性質に対する生育反応を調査する。カワヒバリガイの生息適地のモデル化を行う。チュウゴクオナガコバチの在来種との交雑頻度を全国調査するとともに、導入カブリダニ類と在来種との捕食関係を総合評価し、リスク評価を行う。

コムギの収穫時における圃場外への逸出についてのシナリオを作成し、実験データおよび文献データを用いてコムギ個体群の存続性をより高い精度で定量化する評価方法を構築していく。競合実験を継続し、セイヨウナタネの競合における優位性を評価する。また、遺伝子組換えダイズと近縁野生種ツルマメとの自然交雑の可能性を全国レベルで明らかにする目的で、日長を制御して栽培した5系統のツルマメの開花調査データに基づき、開花予測モデルのプロトタイプを作成する。虫媒性植物による交雑評価手法を開発するための実験系を構築する。交雑抑制に効果的な防風植生および防風ネットの仕様を提案する。

B 自然循環機能の発揮に向けた農業生態系の構造・機能の解明と管理技術の開発

1) 農業生態系の構造・機能の解明と評価

(1) 農業生態系を構成する生物群集の動態と生物多様性の解明

水田農業を中心とした集落を対象に、農法及び周辺の景観構造が昆虫類等の種構成や多様性に及ぼす影響を解明する。それらの影響が大きい種又は種群について地域及び国土レベルでの指標性を評価するとともに、農法や土地利用等の変化が指標生物に及ぼす影響を予測する手法を開発する。また、水田放牧等の新たな農法の導入に伴う景観構造の変化と、植物群落、昆虫相、鳥類相の相互関係について解明する。さらに、流域モデルにより高リスク農薬の動態を予測し、景観構造に基づいて除草剤施用が水生生物の種構成に及ぼす影響を解明する。

(2) 農業生態系機能の発現に関与する情報化学物質の解明

新たなアレロパシー植物の探索、アレロパシー物質の構造解析、被覆植物として有望なアレロパシー植物の選定と圃場試験を行う。国内多地点からフキノメイガとツワブキノメイガ個体を採集し、両者が共存する地域を含め、性フェロモンの地理的変異の有無や程度を明らかにする。生分解性プラスチック分解菌や酵素を用いた省力・低コストで実用的な生分解性プラスチック分解技術の開発を目指し、分解に与える要因等の基礎知見を蓄積するとともに、圃場等で分解性の効果を実証実験する。

2) 農業生態系の変動メカニズムの解明と対策技術の開発

(1) 地球環境変動が農業生態系に及ぼす影響予測と生産に対するリスク評価

圃場スケールでは、これまでに構築・検証を行ってきた包括的な水田生態系応答モデルを用いて、CO応答、温度応答の遺伝的変異に関わる形質を定量的に評価するとともに、将来の気候変動条件下で有効な形質を明らかにする。地域スケールでは、複数の気候シナリオを用いて今世紀半ばまでのコメ生産量予測を行い、予測される生産量の地域的特徴を明らかにするとともに、将来の生産量予測において重要な技術的要素の影響を評価して、影響予測シナリオを提示する。

(2) 農業活動等が物質循環に及ぼす影響の解明

京都議定書第一約束期間以降に実施可能な温暖化緩和技術の普及に資するため、わが国全国の農耕地土壌炭素量変動と水田からのメタン及び農業分野からの亜酸化窒素発生量を推定し、緩和策シナリオによる排出緩和ポテンシャルの温室効果ガス間のトレードオフを考慮した総合的な広域評価を行う。また、アンモニアの発生係数を算定しインベントリーを作成する。

土壌・地形・気象的条件の違いに加えて、土地利用変化および施肥・栽培体系の違いの影響を考慮し、異なる土地利用シナリオの下での地下水中硝酸性窒素濃度の変動を予測する。それにより、硝酸性窒素濃度が基準値を超過する確率を面的に予測し、流域を対象とした水質汚染リスク評価図を作成する。リンについては、亀裂の発達した転換畑および砂質土壌における年間下方移動量を推定する。これらにより、栄養塩類による水質汚染に対する脆弱性を流域レベルで評価するための手法を開発する。

C 農業生態系の機能の解明を支える基盤的研究

1) 農業に関わる環境の長期モニタリング

(1) 農業環境の長期モニタリングと簡易・高精度測定手法の開発

茨城県真瀬の水田を始めとする各調査地点でモニタリングを継続しつつ、ガスフラックスの年次間変動・サイト間差、チベット高原の植生限界高度の気象に着目して、これまでに収集したデータを総合的に解析し、物理環境・ガスフラックスの変動についてとりまとめる。

全国の作物及び土壌の放射性セシウム(137Cs)等のモニタリングを継続する。小麦の種子を用いてRI添加ポット試験を行い、137Cs濃度の上昇要因について明らかにする。137Cs等につき、土地利用ごとの水系への流亡ポテンシャルを見積もる。放射性ヨウ素(129I)の土壌への蓄積状況についてデータを集積する。イムノクロマト法による代表的畑作物のカドミウム分析の手順を定める。米を対象に化学形態別ヒ素の分析マニュアルを作成する。ボルタンメトリー法ではヒ素とカドミウムを対象に、作物毎の分析マニュアルを作成する。300種類程度の農薬の低エネルギーCIDフラグメンテーション・テーブルを作成し、データベースを公開する。分子インプリンティング法の適用方向性を示す。

2) 環境資源の収集・保存・情報化と活用

(1) 農業環境資源インベントリーの構築と活用手法の開発

リモートセンシングについては、合成開口レーダー(SAR)を含む新規衛星画像データの取得と解析を進め、農業生態系・作物群落形質の抽出・評価手法に関する先端知見を得る。また、ハイパースペクトラ利用法、高頻度観測データの利用法等の中期計画期間に得られたアルゴリズム・手法を整理統合し、リモートセンシング手法による新しい農業生態系観測手法を標準プロトコールとしてとりまとめる。空間構造指標については、中期計画期間に提案した指標の特性と機能、応用性を整理し、標準的なプロトコールとしてとりまとめる。また、生物生息地の連続性の評価法や狭小水田による谷津田分布評価法を拡張し、全国規模の主題図を作成する。

平成21年度に公開した土壌情報閲覧システムに新しい情報を付加するため、土壌特性値の地図化手法の確立と地図の整備を行う。栄養塩類の環境影響指標について、最終結果だけではなくその経過による評価(LCI, LCIA)を可能にする。また、これまでの知見を基に、河川生態系を対象とした農薬使用にともなうリスク指標を構築し、環境負荷低減技術の導入等のケーススタディによるリスクの低減効果を評価する。さらに、大規模な塩基配列データを有する生物群へ系統学的多様度による多様性評価を適用するため、事前処理(とくにアラインメント)を効率的に計算する方策の確立と遺伝子情報の入力から系統学的多様度の計算までを一貫して行うソフトウェアを開発する。

今年度策定した素案をたたき台として、包括的土壌分類第1次試案を策定し、農業環境技術研究所報告で出版する。土壌・微生物・昆虫の標本・試料の収集を進め、各種データベースの拡充を図る。具体的には、植物生息微生物の難分解性物質分解能などのデータ追加、三橋ノートの残り108冊の作業完了、DNA分析用昆虫標本コレクションの充実等を目指す。昆虫インベントリーシステムを介して一部の昆虫標本データベースを公開する。ジーンバンク事業に協力する。

2.研究成果の公表、普及の促進

(1) 国民との双方向コミュニケーションの確保

(1) 所の「広報部会」において広報活動の年度計画を作成し、広報情報室を中心に企画戦略室・連携推進室と協力して効果的な広報活動を展開する。広報誌「農環研ニュース」においてわかりやすい記事の掲載に努める。

(2) 第2期中期目標期間において重点的に取り組まれている農業環境のリスク評価とリスク管理について、研究所一般公開におけるミニ講演会、実演・体験コーナー等の企画、研究所見学への対応、ウェブサイトなどを活用して、双方向のコミュニケーションによる国民との情報の共有化を図る。また、出前授業やサイエンスカフェを実施する。

(2) 成果の利活用の促進

(1) 課題評価会議における外部の有識者を含む評価委員の評価に基づいて、普及に移しうる成果を年度内に6件以上選定する。

(2) これまでに公表した普及に移しうる成果については、昨年度に引き続き利用状況等のフォローアップ調査を行い、さらなる普及に努める。

(3) 普及に移しうる成果および主要な成果を「研究成果情報」として刊行するとともに全文をウェブサイトに公開する。農業環境研究の推進や農業環境への理解に有用なデータベース、マニュアルやインベントリー情報をウェブサイトに公開し、専門家及び国民への積極的な情報提供に努める。

(4) 独立行政法人や公設試験研究機関、民間との共同研究を推進する、研究成果の現場への迅速な普及や特許の許諾・実用化に努める。

また、民間との新たな共同研究の仕組みとして整備した資金提供型共同研究を的確に運用し、研究開発を促進させる。

(3) 成果の公表と広報

(1) 研究開発の成果を科学的・技術的知見として広く社会に周知公表し、学界等に大きな波及効果を及ぼすことを目的として成果を発信する。論文については、水準の向上を図りつつ、年度内に162報以上の査読論文を公表する。また、引用度の高い英文誌への掲載を目標として年度内に全発表論文のインパクトファクター(IF)総合計値100を目指す。なお、社会的影響が大きいと思われる問題については、慎重に検討する。

(2) 「研究成果情報」や、「環境報告書」、「農業環境技術研究所報告」等の刊行物について、冊子体を刊行し、PDFファイル形式でウェブサイトに公開する。その他の刊行物については、冊子の目次や概要をウェブサイトに掲載するとともに、内容に応じて全文情報を公開する。また、生物多様性条約COP10に向け、農業・農村と生物多様性に関するシンポジウムを開催するとともに、「農業環境シンポジウム」、「農環研研究成果発表会」、「生態系計測研究会」、「有機化学物質研究会」、「農薬環境動態研究会」、「土・水研究会」等を開催する。また、内閣府、総務省文部科学省などが主催する第9回産学官連携推進会議、農林水産省が主催する「アグリビジネス創出フェア」等の展示イベントに積極的に参加し、産学官民に対して研究開発成果の普及に努める。さらに、地方への研究成果の普及のために公設試験研究機関との共催で研究会を開催する。

(3) 研究所の研究成果をわかりやすくプレスリリースするとともに、ウェブサイトや「食と農の科学館」、「農業環境インベントリー展示館」等を活用して研究成果の広報・啓発活動を進める。また、広報誌「農環研ニュース」、ウェブマガジン「情報:農業と環境」等により、研究所の活動や研究成果を広報する。プレスリリースは年度内に6件以上行う。

(4) MARCO、アジア・太平洋外来生物データベース(APASD)等、インターネットを利用した国際的な情報発信機能を強化する。

平成21年度に開催した「MARCO国際シンポジウム」に関する成果情報を発信する。

英語版ウェブサイトにおいて NIAES Annual Report (英語版研究所年報)のPDFファイルを公開するほか、国際的な情報発信に努める。

(4) 知的財産権等の取得と利活用の促進

(1) 農業環境技術研究所知的財産権基本方針に基づき、研究成果実用化の可能性や市場性などを客観的に判断して、質の高い知的財産の創出を推進する。また、研究成果の権利化、ライセンス先のマーケティング及び契約締結等の技術移転業務についてはAFFTISアイピー等外部TLOを活用する。一方、一定期間実施許諾や問い合わせのない特許については更新の見直しを行う等、知的財産の適正な管理を行う。

(2) 研究成果の知的財産権を確保し、これを産業界に円滑に移転し、事業化させるため、実施許諾等の可能性に関する先行特許調査を十分実施した上で、年度内に5件以上の国内特許を出願し、その権利化に努める。また、AFFTISアイピー等TLOの活用や各種イベント、フェア、連携推進に関する会議等への参加により産学官民へ特許情報の提供を行い、その実施許諾の拡大に努める。

3.専門分野を活かしたその他の社会貢献

(1) 分析、鑑定

行政、各種団体、大学、民間等の依頼に応じ、高度な専門的知識が必要とされ、他の機関では実施が困難な化学物質の分析や昆虫や微生物等の同定・分類等の鑑定を実施する。この際、必要に応じて所要の対価を徴収する。

(2) 講習、研修等の開催

(1) 国や団体等が主催する研修へ研究職員を講師として派遣するとともに、研究所で土壌調査法に関する研修会等を年度内に2件以上開催し、40人以上の受講者を目標とする。

(2) 技術講習制度及び依頼研究員制度による、独立行政法人、国公立試験研究機関、大学及び民間等から講習生や研究員の受入、また、海外から短期及び長期JICA研修生等の受入によって、研究成果の普及を図る。インターンシップ制度を活用して、大学生、大学院生への職業体験と農業環境研究への理解の促進を図る。

(3) 行政との連携

農林水産省など行政部局との情報交換会を行う。また、残留性有機汚染物質(POPs)等緊急対応が求められている問題については、行政部局との連携を緊密にしていく。平成21年度に設置された全国レギュラトリーサイエンス連絡協議会にも積極的に参画し、情報共有及び意見交換を促進する。さらに、行政等からの要請による委員会(国の要請、公共団体等の受託による。)への参加件数(委員会数)について年度内に100件以上を目指す。

(4) 国際機関、学会等への協力

農業環境研究に関係するIPCC、OECD、IGBP等の国際機関、国際学会及び国内の学会の役員や委員に職員を積極的に派遣し、その運営に協力する。また、OECD等の国際機関が開催する専門家会議に要請に基づいて積極的に職員を派遣する。

第3 予算(人件費の見積りを含む。)、収支計画及び資金計画

1.予算

平成22年度予算

(単位:百万円)

区分 金額
収入
  • 前年度よりの繰越金
  • 運営費交付金
  • 施設整備費補助金
  • 受託収入
  • 諸収入
    • その他の収入
  •  
 
  • 116
  • 3,066
  • 127
  • 931
  •  
  • 4,243
支出
  • 業務経費
  • 施設整備費
  • 受託経費
    • 試験研究費
    • 管理諸費
  • 一般管理費
  • 人件費
  •  
 
  • 856
  • 127
  • 931
    • 838
    • 93
  • 347
  • 1,982
  •  
  • 4,243

百万円未満を四捨五入してあるので、合計とは端数において合致しないものがある。

2.収支計画

平成22年度収支計画

(単位:百万円)

区分 金額
費用の部
  • 経常費用
    • 人件費
    • 業務経費
    • 受託経費
    • 一般管理費
    • 減価償却費
  • 財務費用
  • 臨時損失
4,236
  • 4,236
    • 1,982
    • 754
    • 916
    • 347
    • 237
収益の部
  • 運営費交付金収益
  • 諸収入
  • 受託収入
  • 資産見返負債戻入
  • 臨時利益
  •  
純損失
前中期目標期間繰越積立金取崩額
総損失
4,213
  • 3,080
  • 931
  • 199
  •  
  • 23
  • 14

百万円未満を四捨五入してあるので、合計とは端数において合致しないものがある。

※前中期目標期間繰越積立金取崩額は、前中期目標期間において自己財源で取得した固定資産の減価償却費が費用計上されることに伴う前中期目標期間繰越積立金の取り崩し額。

3.資金計画

平成22年度資金計画

(単位:百万円)

区分 金額
資金支出
  • 業務活動による支出
  • 投資活動による支出
  • 財務活動による支出
  • 次期中期目標の期間への繰越金
4,243
  • 3,999
  • 243
資金収入
  • 業務活動による収入
    • 運営費交付金による収入
    • 受託収入
    • その他の収入
  • 投資活動による収入
    • 施設整備費補助金による収入
    • その他の収入
  • 財務活動による収入
    • その他の収入
  • 前年度よりの繰越金
4,243
  • 4,000
    • 3,066
    • 931
  • 127
    • 127
  • 116

百万円未満を四捨五入してあるので、合計とは端数において合致しないものがある。

第4 その他農林水産省令で定める業務運営に関する事項等

1.施設及び設備に関する計画

施設整備費補助金においては、B地区内に上水を供給している受水槽・高置水槽並びに配管類が経年により防水目地の劣化や配管の腐食など老朽化が進行しているため改修を行う。

また、運営費交付金では、受変電設備や消防設備その他の施設・設備の点検時における指摘箇所について、対応計画を策定し実施する。

(単位:百万円)

施設・設備の内容 金額 財源
給排水衛生設備改修 127 施設整備費補助金
合計 127

2.人事に関する計画

(1) 人員計画

(1) 方針

化学薬品等の安全管理の強化のため、安全管理専門役を振り替え安全管理室を設置する。また、研究情報管理の強化等のため、研究情報システム専門役を振り替え研究情報システム管理室を設置する。

(2) 人員に係る指標

平成22年度の常勤職員数は、中期目標期間の期初を上回らないものとする。

(2) 人材の確保

(1) 必要な人材を確保するため、平成22年度採用計画を策定する。それに基づき研究職員の採用は公募によることとし、テニュア審査を希望することができる任期制を積極的に活用する。

(2) 女性研究者の採用に関しては、応募者に占める女性割合と、採用者に占める女性割合とでかい離が生じないよう努める。また、女性研究者支援事業の取り組みの推進により、応募者数の拡大を図る。

(3) 研究担当幹部職員の採用については、広く有能な人材を求めるため、公募制の適正な活用を図る。

(4) 所の「男女共同参画推進委員会」を中心に、女性研究者支援モデル育成事業「双方向キャリア形成プログラム農環研モデル」を推進する。また、平成22年度から5年間の次世代育成支援行動計画に基づく仕事と子育てを両立しやすい雇用環境の整備を図る。

3.情報の公開と保護

(1) 所の諸活動について社会への説明責任を果たすため、情報提供を行うとともに、情報の開示請求があったものに対しては適正かつ迅速な対応を行う。

(2) 個人の権利、利益を保護するため、関係法令の周知を図り、個人情報の適正な取扱を一層推進する。所の「農業環境技術研究所ネットワークにおける情報セキュリティ対策基準」に基づき、個人情報漏えい事故等の防止に努める。また、研究情報管理の強化等のため、研究情報システム専門役を振り替え研究情報システム管理室を設置する。(第1の2−(3)にも記述)

4.環境対策・安全管理の推進

(1) 環境配慮及び安全管理の基本的考え方を明確にした「環境憲章」の理念や行動指針に基づいた研究所の事業活動に係る環境配慮などの状況を環境報告書で公表する。また、所の「環境・安全委員会(環境保全推進部会)」等の提言や「環境マスタープラン」に基づいて、設備機器類の省電力・省エネルギー型への改修や導入、水資源の節減やコピー用紙等紙資源の削減対策を実施する。

管理運営に伴うエネルギー使用量の把握、解析についても引き続き行い、エネルギー使用量等の内容を職員に周知する。さらに、廃棄物の抑制と物品等のリユース及びリサイクル並びに適正な処分に努める。化学物質の管理については、薬品管理に関する規定に基づいた管理を徹底するとともに、保管状況を一元的に把握できるオンラインシステムを活用して管理体制を強化する。化学薬品等の安全管理の強化のため、安全管理専門役を振り替え安全管理室を設置する。(第1の2−(3)にも記述)

(2) 放射性同位元素については、取扱者を対象に「放射線障害防止のための教育・訓練」を実施するとともに、適正な管理に努める。さらに、文部科学省による「管理下にない放射性同位元素に関する一斉点検及び報告依頼について」に基づき、10月までに、管理区域外において管理下にない放射性同位元素等が放置されていないか等について一斉点検を実施し、その結果を報告する。また、遺伝子組換え生物等の使用については、関連法令の遵守を定めた研究所諸規程に従うとともに、「組換え生物第二種使用安全管理委員会」、「隔離ほ場組換え植物安全管理委員会」など所の関係委員会で審査・承認されたものに限り実施させる。また、法令の遵守事項について職員への周知徹底を図る。

(3) 職員自らが安全衛生に関する責任と意識を持って業務を遂行するため、多方面からの安全等の教育を実施する。所の「安全衛生委員会」では職場巡視に基づく措置が確実に実施されることを確認する。「共用施設・機器等の利用、安全衛生各種事務手続きマニュアル」の点検・見直し充実を図る。また、職員等に対して消防訓練、救命講習等の防災意識向上に必要な教育・訓練等を行うことで、事故・災害の防止に役立てる。さらに、化学物質については、薬品管理に関する規定に基づいた巡視・点検を実施し、適正で安全な管理の推進に取り組む。