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情報:農業と環境 No.98 (2008年6月1日)
独立行政法人農業環境技術研究所

研究プロジェクト 「農業に有用な生物多様性の指標及び評価手法の開発」 の開始

平成20年度から、新たな研究プロジェクト「農業に有用な生物多様性の指標及び評価手法の開発」(農林水産省委託プロジェクト)が開始されました。環境保全型農業を効果的に推進するため、天敵などを対象とする生物多様性指標とその評価手法の開発をめざします。

プロジェクトの背景と目的

生産性と生物多様性が両立する、持続的な農業の発展をはかるため、環境を重視した農業技術の開発や普及が進められています。しかし、それぞれの技術が生物多様性にとってどのくらいの効果があるかは、よくわかっていません。効果の程度を知るためには、効果を測るものさし(指標)が必要です。第三次生物多様性国家戦略にも、各種施策の効果を把握するために、わかりやすい指標の開発を進める必要性が明記されています。

このプロジェクトでは、農業のやり方が生物多様性に及ぼす効果を、科学的な根拠に基づいて評価するため、指標になる生物を選び出し、その評価手法を開発することを目的としています。

対象とする生物は、環境保全型農業を行ううえで役に立ち、またその有用性がわかりやすいものとして、おもに農業害虫の天敵昆虫など農業に有用な生物に的を絞っています。全国を地域別・作物別にわけ、農法や農業技術の影響を受けやすく、わかりやすい指標生物の候補を選び出し、農業の現場での調査や評価が可能な評価手法を開発します。

プロジェクトの内容

(1) 指標の候補を選抜するための研究

天敵など農業に有用な生物多様性について、農法・農業技術の影響を受けやすく、わかりやすい指標生物を地域別・作物別に選定し、現場レベルで使える評価手法を開発します。指標候補となる生物には、各ほ場の管理の影響を受けてほ場単位で異なる生物種、また移動性が大きいため集落など広い範囲で異なる生物種がいることが予想されます。そこで、ほ場単位(おもに野菜と果樹)および集落単位(おもに水田を中心とする集落)においてそれぞれ生物多様性を調査、解析します。

(2) 指標及び簡便な評価手法の開発

指標となる生物種の簡易識別法、効率的モニタリング法・トラップ法など、簡便な評価手法の開発を行うための基礎的研究を行います。

(3) 国土全体の把握・予測を行うための研究

地域別・作物別に得られる指標生物のデータを、広域的(全国レベル、地域レベル)に把握、比較するシステムを構築し、農業に有用な生物多様性の変化を予測する手法を開発します。

実施の体制

上記のプロジェクト内容 (1) と (3) については農業環境技術研究所、(2) については農業生物資源研究所が、それぞれ中核機関となって、農業・食品産業技術総合研究機構 (果樹研究所、野菜茶業研究所,中央農業総合研究センター、東北農業研究センター、北海道農業研究センター)、大学 (岡山大学、九州大学、宮崎大学、法政大学、東京農業大学)、公立試験研究機関 (25の都府県)が協力・分担して研究を実施します。

参考情報:平成20年度新規プロジェクト研究等(農林水産省農林水産技術会議事務局のページ)

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