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情報:農業と環境 No.105 (2009年1月1日)
独立行政法人農業環境技術研究所

農林水産技術会議事務局「2008年農林水産研究成果10大トピックス」
―農環研の研究成果 「イネ科作物の葉の表面などに生息する微生物が生分解性プラスチックを効率よく分解」 が第6位に―

2008年12月17日、農林水産省農林水産技術会議事務局は 「2008年農林水産研究成果10大トピックス (ページのURLが変更されました。2015年1月) 」 を発表しました。これは、農業技術クラブ (農業関係専門紙・誌など30社加盟) の協力により、この1年間に報道された農林水産研究の成果から、研究開発の内容に優れ、社会的関心の高いと考えられる成果10課題を選定したものです。

選定された研究成果は次のとおりです。

2008年農林水産研究成果10大トピックス

1 蛍光色を持つ高機能絹糸・繊維の開発に遺伝子組換えカイコを用いて世界で初めて成功

2 産卵海域で成熟した親ウナギの捕獲に世界で初めて成功

3 生きた牛に音の刺激を与えた時の脳波の一種から、BSEの臨床診断に役立つ方法を開発

4 養豚で発生するリンの再利用技術を開発

5 飼料イネを活用した繁殖和牛の周年放牧による合理的な農地利用法を開発

イネ科作物の葉の表面などに生息する微生物が生分解性プラスチックを効率よく分解

7 農作業の負担を大幅に軽減する「ロボットスーツ」を開発

8 玄米反収が800kgを超え飼料米用品種として有望な「モミロマン」を育成

9 植物が病原菌から身を守る免疫反応の指令役となるタンパク質をイネで発見

10 肥料を大幅に削減できる露地野菜向け部分施肥技術の開発

農業環境技術研究所の研究成果からは、第6位に「イネ科作物の葉の表面などに生息する微生物が生分解性プラスチックを効率よく分解」 が選ばれました。

この成果は、植物の葉の表面が生分解性プラスチック (生プラ) の構造と似ていることに着目してイネ科作物の葉面に生息する微生物の中から生プラを分解する微生物を探索し、生プラを強力に分解する2種類の微生物 (酵母菌および糸状菌) を発見したものです。これらの微生物およびそれらが生産する分解酵素は、農業用マルチフィルムなどに使われているポリブチレンサクシネート(PBS)やポリブチレンサクシネート/アジペート(PBSA)などの生プラを効率よく分解し、さらに、酵母菌は、より分解しにくいポリ乳酸も分解できました。

プラスチック廃棄物回収の手間と処理量を減らすため、農業用資材等への生プラの導入が進められていますが、生プラは分解性を高めると資材としての強度が落ち、逆に強度を高めるとほとんど分解されないという問題がありました。農業環境技術研究所が発見した微生物とそれらの生産する分解酵素を利用して、使用済みの生プラの分解を制御する実用技術の開発が期待されます。

(参考)

・ プレスリリース (2008年3月10日 農業環境技術研究所)

「農環研が生分解性プラスチックを強力に分解する微生物をイネの葉の表面から発見 ―プラスチックごみの減量と省力化に期待―」

・ プレスリリース (2008年10月22日 農業環境技術研究所)

農環研が植物の葉から生分解性プラスチックを強力に分解するカビを発見 ―環境負荷低減と省力化の新技術開発に期待―

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