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農業と環境 No.162 (2013年10月1日)
独立行政法人農業環境技術研究所

農耕地土壌の百科事典 「土壌情報閲覧システム」 (日本農民新聞連載 「明日の元気な農業への注目の技術」 より)

多彩で多様な土壌

農業生産者に 「身近な土はどんな土ですか?」 と聞くと、赤土、黄土、黒土、ネバ土(粘土の多い土)、砂土といった答えが返ってきます。土壌を色や触った感じから区分する方法は、とても分かりやすく便利です。しかもこれらの性質は、農業の生産性を考える上で、とても重要な情報でもあります。江戸時代の農学書「土性辨(べん)」では、農業生産性の観点から土壌をその色や触感によって等級分けをしていました。現在でも、農耕地の生産性評価に欠かせない農耕地土壌分類では、粘土の量や土壌の色が重要な分類項目となっています。例えば、粘土含量が高いものから順に強粘質、粘質、壌質、砂質と土壌の種類分けを行います。また、黒ボク土、褐色森林土、灰色低地土、黄色土、赤色土、暗赤色土と、土の色が土壌の分類名についているものも多くあります。その他にも、湿田の土壌は青色を帯びる場合があり、西日本などの台地には虎柄模様の土壌を見つけることもできます。私たちの足元には、このように多彩で多様な土壌が広がっているのです。

土壌の性質や分布を知って営農指導力アップ

では、みなさんの地域にはどのような土壌が分布しているのでしょうか? 営農指導の現場で、土壌診断の結果を読み解き、施肥改善を促す時、担当地域の農地土壌の性質やその分布状況を把握することは重要なことだと思います。土壌診断結果を生産者に説明する際に、土壌の性質が似た農地や性質が違う農地と比較をすれば、説得力が増し、円滑な施肥改善につながるでしょう。また、生産技術の適応可能範囲を検討したり、他の地域でうまくいった事例を担当地域内へ導入する際、さらには、産地のブランド力を高めるために品質の均質化を図る時にも、土壌の性質やその分布状況を考慮することが大切です。このように、営農指導に携わる方々にとって、担当地域内の農地土壌の性質やその分布が分かれば営農指導力を強化できるでしょう。それを簡単に調べることができるツールが土壌情報閲覧システムです。

「土壌情報閲覧システム」のトップページと土壌図(ウェブページ画面のコピー)

「土壌情報閲覧システム」

土壌情報閲覧システム (http://agrimesh.dc.affrc.go.jp/soil_db/) は、(独)農業環境技術研究所がこれまで蓄積してきた全国各地の農地土壌に関する情報を体系化して2010年4月にインターネット上に公開したものです。ネット上での簡単な操作により、全国各地の農地土壌の性質やそれらの分布状況を調べることができます。まず、トップページにある土壌図ボタン(図)をクリックし、現れた住所検索ページに調べたい地域の住所を入力して検索します。すると、指定した地域の農地土壌の分布がわかる土壌図が表示されます。さらに、土壌図上をクリックすると、クリックした地点に分布する土壌の解説が表示され、土壌の種類名やその性状、写真などが見られます。一連の所要時間は、インターネットの接続環境にも左右されますが、1分程度とかなり簡便です。

農耕地土壌の百科事典

ここまでに紹介した(1)土壌の種類ごとの説明 「土壌分類の解説」、(2)農地土壌の種類と分布がわかる 「土壌図」 の他にも、土壌情報閲覧システムには、(3)作土層の理化学性 (作土層の厚さ、ち密度、仮比重、三相分布、保水性、pH、EC、置換酸度、全炭素、全窒素、交換性塩基、塩基置換容量、可吸態の窒素・リン酸・ケイ酸含量) を土壌・作目・調査年代ごとに表示した 「作土層の理化学性データベース」、(4)土壌断面の調査情報が収録された 「土壌断面データベース」、 (5)表層下30−50センチメートルの平均土壌温度の分布状況と土壌温度区分がわかる 「土壌温度区分図」、および (6)明治から昭和初期にかけて作成された世界最古の土壌図 「大日本帝国土性図」 が閲覧・利用できます。

是非、多くのコンテンツを持つこの土壌情報閲覧システムを利用いただき、土壌診断結果の活用や、新規生産技術・有用事例導入の検討などの、営農指導力の強化に役立ててください。

農業環境インベントリーセンター 高田裕介

農業環境技術研究所は、農業関係の読者向けに技術を紹介する記事 「明日の元気な農業へ注目の技術」 を、18回にわたって日本農民新聞に連載しました。上の記事は、平成23年(2011年)12月25日の掲載記事を日本農民新聞社の許可を得て転載したものです。

もっと知りたい方は、以下の関連情報をご覧ください。

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