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農業と環境 No.168 (2014年4月1日)
独立行政法人農業環境技術研究所

農業環境技術研究所の30年 (3)土壌環境研究の系譜

1.はじめに

土壌環境研究領域では、土壌資源の化学的特性解明と機能評価、土壌・作物の相互作用解明と制御技術開発、および肥料の環境中における動態解明と制御技術開発等の観点から、リン酸・カリウム・有機態窒素などの土壌・作物での動態解明、微量元素(マンガン、イオウ、ホウ素等)の分析法やそれを用いた作物の産地判別技術開発、レアメタル、カドミウム、ヒ素等の環境汚染物質の研究などが行われてきた。

農林水産省では、コーデックス委員会における食品中のカドミウムの新基準案の検討に対応するため、水稲をはじめ、ダイズ、麦等の主要畑作物、野菜等のカドミウム吸収抑制技術の開発を 2000 年度から開始した(「農用地土壌から農作物へのカドミウム吸収抑制技術等の開発に関する研究」)。これを受けて農業環境技術研究所では、独立行政法人の農業関係研究機関、県農業試験場、大学、民間等と協力して、主要な農耕地土壌中のカドミウム分布実態の解明、作物ごとの土壌カドミウム可給性の解明、作物汚染リスク予測技術の開発とマッピング手法の確立、それらに基づくカドミウム吸収抑制技術の開発等の研究を相次いでスタートさせた。

農業環境技術研究所では、2001 年度からの第1期中期計画期間には、化学環境部のもとに重金属研究グループを組織し、重金属評価研究官、重金属動態ユニット、土壌化学ユニット、土壌生化学ユニットをおいた。2006 年度からの第2期中期計画期間では重金属研究グループと放射性物質研究のグループにより土壌環境研究領域を組織し、リサーチプロジェクト(RP)として重金属リスク管理RPをおいた。2011 年度からの第3期中期計画期間からは有害化学物質リスク管理RPをおき、その中でカドミウムとヒ素の研究に取り組んでいる。この間に 「水稲のカドミウム吸収抑制のための技術確立マニュアル(農林水産省・農業環境技術研究所、初版 2002、改訂版 2005 )」、「大豆のカドミウム吸収抑制のための技術確立マニュアル(農林水産省・農業環境技術研究所、初版 2004、改訂版 2007)」 を作成した。これらのマニュアルは農林水産省の事業やカドミウムの基準値超過が懸念される地域等で広く活用されている。

本稿では放射性物質研究をのぞく土壌環境研究について、研究成果情報などにまとめられているものを中心に紹介する。

2.リン酸、カリウム、有機態窒素の動態解明

土壌中に蓄積したリンの特性解明に関する研究では、リン酸保持容量の新測定法、土壌中のリン酸イオン集積状態の測定法などが開発された。土壌蓄積有機リンの有効利用のために土壌中のホスファターゼの研究が行われた。リン酸肥よく度の低い場合の低リン酸耐性植物の適応機構とその検索が行われた。ラッカセイが持つ難溶性リン酸の吸収能力は、根長や根分泌物、あるいは 最低リン酸吸収濃度の要因から説明することはできず、根表面と土壌粒子の 接触溶解反応に起因する新しい養分吸収機構によることを提案した。ジャポニカ(日本晴)とインディカ(Kasalath)の交雑種に関する遺伝子地図を用いてイネの低リン酸耐性に関わる四つの量的形質遺伝子座(QTL)の存在を推定し、そのうち二つのQTLについて低リン酸土壌におけるリン酸吸収能に関連していることを確認した(Wissuwa et al., 1998)。

カリウム吸収能には作物間差があり、カリウム吸収能が高くケイ酸含有率が低い畑作物では跡地土壌中の 2.5%酢酸抽出ケイ酸量が増加した。このことから、カリウム吸収能の高い畑作物は、土壌中のケイ酸の可溶化を促すことが示された(杉山・阿江, 2000)。

各種作物を用いた畑ほ場試験において、C/N 比の高い有機物の施用反応はイネ(リクトウ)で顕著であった。その要因として、イネはトウモロコシに比べてアミノ態、アンモニア態窒素の吸収能力が高いことが示唆され、このことがイネの優位性の要因の一つと考えられた(山縣, 2000)。 土壌からリン酸緩衝液により抽出されるタンパク質は、施用有機物や、土壌の種類および管理状態(水田・畑)に関係なく、 約 9,000 の分子量を持つきわめて均質な物質であった。チンゲンサイは、菜種油粕を施用した時、生育および窒素吸収量が硫安施用区よりすぐれ、菜種油粕の分解過程において土壌中に蓄積したタンパク様窒素化合物(分子量約 8000〜9000 ダルトン)を直接的に吸収している可能性がある。

3.微量元素の動態解明

土壌中のマンガン酸化物の重金属・有機物に対する酸化作用を検討し、開発した手法を各種土壌に適用した結果、(1) 黒ボク土の土壌酸化能は特異的に低く、(2) 黒ボク土では酸化反応よりも吸着反応が優勢となること、(3) その他の土壌では本法により土壌マンガン酸化物の酸化反応を評価可能であること、(4) 乾燥によって土壌酸化能が低下することを明らかにした(牧野, 2001)。

蛍光X線を利用した研究で、微小部分蛍光X線マッピング装置による植物の生理障害診断、高分解能X線分析顕微鏡による植物体内のマンガン、カルシウム等の非破壊的計測、放射光光源/X線吸収分光法による水稲生葉中マンガンの存在形態分析が行われた。

酸性降下物による土壌酸性化の将来予測には土壌へ負荷される酸性物質の負荷量を正確に見積もる必要があるため、土壌表面における二酸化硫黄の吸着・酸化反応装置を開発し、大気からの硫酸イオン負荷量を推算した。アロフェン質で硫酸イオン吸着能が高い黒ボク土では、施肥来歴のない林地土壌においてもすでに多量の硫酸イオンが蓄積されており、大気からの硫酸イオン負荷に対する土壌酸緩衝能の大小は吸着能の大小とは必ずしも一致しなかった(麓, 1996)。

必須微量元素であるホウ素は、植物体内で、水溶性のホウ酸とホウ酸モノおよびジエステル態として存在し、また、 細胞壁中では、ホウ酸ジエステル態としてペクチンを架橋し、基本構造体の構成要素として機能していた(Matsunaga et al., 1996)。さらに、ホウ素を含む多糖複合体は、鉛など毒性元素を捕捉する機能をもつことがわかった。

サイズ排除高速液体クロマトグラフィー/ICP質量分析法を用いて、カドミウムストレスを受けた植物中のカドミウム−γECペプチド複合体の構造は、 (1) 不均一であること、(2) コマツナとイネとでは異なること、(3) 水耕液中のカドミウム濃度により異なることを明らかにした。

ホウ素同位体比( 11B / 10B )とストロンチウム同位体比( 87Sr / 86Sr )の違いから、国内産米と外国産米(オーストラリア産米、中国・ベトナム産米、カリフォルニア産米)の判別が可能であった(Kawasaki and Watanabe-Oda, 1999)。中国山東省産と上海産ネギのストロンチウム同位体比は国内産ネギより高い。中国福建省産のストロンチウム同位体比は国内産と同水準にあるが、ストロンチウム濃度は国内産より高い。これらの特性から、中国産と国内産ネギの産地国判別ができた。

レアメタルによる農業環境汚染に関連して、ランタンおよびベリリウムの水稲による吸収と生育への影響、発生源別汚泥のベリリウム、バナジウム、ガリウム、アンチモン、ランタンおよびビスマスの含有レベル、有機性廃棄物に含まれるレアメタル類の組成が研究された。

廃水処理余剰汚泥中のレアメタルのうち希土類元素については、地殻規格化パターンの解析から、都市下水汚泥、 化学工場汚泥への一部の元素の集積が認められた。希土類元素以外では、都市下水汚泥施用によって土壌中の銀、カドミウム、アンチモン、タリウム、ビスマスの易溶性画分濃度が高まる可能性があった。

4.カドミウムの動態解明

4.1 土壌中の動態と作物吸収

水溶態重金属の溶存形態分析法を開発し、土壌の湛水による水溶態カドミウム、銅および亜鉛の濃度変動と各元素の溶存形態を明らかにした。水溶態カドミウムのイオン形態は陽イオン画分が多く、湛水により溶存濃度は顕著に減少した。

ほ場条件下でダイズによるカドミウムの吸収・移行特性を簡便、正確、かつ安全に調査する試験法として、カドミウムの安定同位体(113Cd)トレーサー法を開発した。本法により、生育前期に吸収されたカドミウムが生殖生長期にダイズ子実へ移行することを示した。

出穂期以後の湛水期間と玄米中カドミウム濃度の間に逆相関が認められ、湛水期間が長くなるほど玄米中カドミウム濃度が低下した。また、出穂期以後の土壌溶液中カドミウム濃度と玄米中カドミウム濃度の間には相関が認められ、土壌溶液中カドミウム濃度を指標に玄米中カドミウム濃度の推定が可能である。

肥料由来カドミウムの作物による吸収と土壌負荷量を推定するため、豆類用と水稲用の113Cd標識肥料を試製した。ダイズに吸収された全カドミウムのうち、11 %が肥料由来であったが、それは施用したカドミウム量の 0.13 %に過ぎず、残りは土壌中に負荷された。

農林水産省が行ったカドミウム汚染に関する全国実態調査の土壌試料を化学分析した結果と、ダイズ子実のカドミウム・データを合わせて作物・土壌データベースを構築した。そのデータベースから抽出した土壌属性を用いて、重回帰分析によりダイズ子実のカドミウム濃度を予測した。

有機性廃棄物の施用により畑地に持ち込まれるカドミウム量(北海道では平均 2.7 g / ha)は、収穫等で畑地から持ち出されるカドミウム量より多いが、有機性廃棄物を5年間連用した農地でも作物中のカドミウム濃度は増加しなかった。

つくば市水田を調査対象としたカドミウム収支計算の結果、肥料・降水・灌漑水による 3.2 g / ha 年の供給、排水・玄米の収穫による 0.8 g / ha 年の持ち出しとなった。土壌カドミウム濃度の上昇は 1.6 g / kg 年と推定され、土壌総カドミウム濃度( 0.35 mg / kg)と比較すると非常に小さいことがわかった(Yada et al., 2008)。 土壌中のカドミウムのうち、最大でどのくらいのカドミウムが植物に吸収されうるかをカドミウム安定同位体法で求めた。カドミウム濃度の低い土壌においても、およそ半分のカドミウムは植物に吸収されうる形態で存在していることがわかった(Kawasaki and Yada, 2008)。

4.2 作物・品種による蓄積能の違いとその要因

わが国の代表的なダイズ品種等の中から、子実カドミウム濃度の低い品種を検索した(Arao et al., 2003)。この品種は、根の細胞壁にカドミウムを蓄積し、地上部への移行を妨げていたが、高い品種はこのような蓄積能を持たず、カドミウムをそのまま地上部へ移行させていた(Sugiyama et al., 2007)。これらの品種の遺伝系統樹から判断して、根におけるカドミウムの蓄積能は遺伝的形質である。カドミウム汚染土壌を充填したポットで播種後3週間まで栽培したダイズ幼植物体中のカドミウムと亜鉛の濃度比から、子実カドミウム蓄積性が高い品種を簡易に検定できた。

水耕栽培したダイズ「エンレイ」において、子実へのカドミウムの移行速度は着莢盛期から粒肥大盛期に高く、その時期に吸収したカドミウムが子実中含量の約 50%を占める。また、葉から転流したカドミウムの成熟期の子実中含量に与える影響は小さい。

ナスの接ぎ木栽培において、スズメナスビ(トルバム・ビガー、トナシム等)を台木に用いることで、土壌、穂木品種や作型によらず、果実中カドミウム濃度を2分の1から4分の1に低減することができた(Arao et al., 2008)。シンクロトロン放射光源マイクロビーム蛍光X線分析法を使って、この台木種の根の内皮近傍にカドミウムが高蓄積していることをマイクロメータースケールで可視化することに成功した(Yamaguchi et al., 2011)。 玄米のカドミウム濃度には2〜10倍程度の品種間差があることを明らかにした(Arao and Ae, 2003)。さらに玄米カドミウム濃度の低い品種を育種素材として、一般普及品種に比べ玄米カドミウム濃度が約半分の新たな系統を開発した(Abe et al., 2013)。玄米のカドミウム集積に関わる遺伝子座(QTL)を、第7染色体の短腕側に同定した。この QTL は銅、鉄、マンガン、亜鉛の必須重金属の玄米集積には関与せず、カドミウム濃度のみを特異的に高めることがわかった(Ishikawa et al. , 2010)。

イネの品種間およびナス属の作物種間における地上部のカドミウム集積の違いを決定する生理的要因を解析したところ、根に取り込まれたカドミウムを導管に輸送する能力の差異が決め手であることがわかった(Mori et al., 2009; Uraguchi et al., 2009)。イネ品種間のカドミウム集積能の違いをポジトロン放出核種 107Cd を使って、リアルタイムで可視化することに世界で初めて成功した(Ishikawa et al., 2011)。イネのカドミウム吸収機構を解明するため、シンクロトロン放射光源マイクロビーム蛍光X線分析法を用いて第1節位の元素分布を観察した。低集積品種のコシヒカリでは維管束内でカドミウムが停滞し、穂への輸送が制限されていることがわかった(Yamaguchi et al., 2012)。

図1 低カドミウム原因遺伝子(OsNRAMP5)の変異挿入概要

a. OsNRAMP5 のゲノム構造と lcd-kmt1 と lcd-kmt2 の変異挿入箇所
b. lcd-kmt3 の欠損部位(赤い部分が欠損箇所を示す)

lcd-kmt1 は OsNRAMP5 に 433 bp の挿入、lcd-kmt2 は 1 bp の欠損、lcd-kmt3 は OsNRAMP5 を含む約 277 kbp に欠損が認められた。

4.3 低カドミウムコシヒカリ変異体の開発

コシヒカリの種子にイオンビームを照射することで、カドミウムをほとんど吸収・蓄積しない突然変異体を開発した。この変異体を栽培することで、米におけるカドミウム濃度は 97%以上削減され、この変異体の生育や収量、食味はコシヒカリと同等である。本変異体が持つ低カドミウム遺伝子を他のイネ品種に導入し、新たな低カドミウム品種を作ることも可能である(Ishikawa et al., 2012)。土壌中のカドミウムをほとんど吸収しなくなったコシヒカリの変異体(コシヒカリ環1号、品種登録出願中)は、カドミウムやマンガンの輸送に関わるトランスポーター遺伝子である OsNRAMP5 の DNA 配列に変異が挿入されていることがわかった(図1)。

4.4 土壌修復技術:ファイトレメディエーション

土壌タイプの異なるカドミウム汚染水田においてイネ、ダイズ、トウモロコシを畑条件下で栽培すると、イネがもっとも多くカドミウムを吸収する。イネは土壌中のカドミウム可溶性画分だけでなく難溶性画分も吸収可能で、汚染水田のファイトレメディエーションに最適であった (Ishikawa et al., 2005; Ishikawa et al., 2006; Murakami et al., 2007)。

カドミウム高吸収イネを「早期落水法」で2〜3作栽培することにより、土壌のカドミウム濃度を 20〜40%、玄米のカドミウム濃度を 40〜50%低減することに成功した。また、「もみ・わら分別収穫法・現地乾燥法」による低コスト処理方法を開発した(Murakami et al., 2008; Murakami and Ae, 2009; Murakami et al., 2009)。現在、カドミウム高吸収イネの栽培特性の改善などに取り組んでいる(Abe et al., 2011; 安部ら, 2013)。

4.5 土壌修復技術:化学洗浄法

水田に化学洗浄剤と用水を加えて代かきし、土壌中のカドミウムを溶出して排水除去し、現場設置型の排水処理装置でカドミウムを回収する。本法は土壌中のカドミウムを速やかに除去して修復し、玄米収量を低下させずに玄米のカドミウム含量を大幅に低減できる(Maejima, Y. et al. 2007; Makino et al., 2006; Makino et al., 2007)。汚染水田に塩化鉄を溶かした用水を入れて土壌とよく混合し、カドミウムを溶出させて排水することにより、土壌のカドミウム濃度を 60〜80%、生産される玄米のカドミウム濃度を 70〜90%低減する実規模のオンサイト土壌洗浄技術を確立した(Akahane et al., 2013; 赤羽 ら,2013; Makino et al., 2008)。

4.6 生産現場や流通段階で利用できる簡便な分析技術

玄米から希塩酸でカドミウムを抽出・カラム精製した後、イムノクロマトキットを用い、その発色値から大まかなカドミウム濃度を簡易・迅速に測定することができる。また、土壌の 0.1 mol / L 塩酸抽出カドミウム濃度の測定も可能である(阿部ら, 2006)。イムノクロマトキットを用いたカドミウム濃度測定法を各種の農産物に適用するために、それぞれの品目に適した前処理や抽出法などを開発した。これにより農産物別のカドミウム国際基準値に対応した濃度範囲を測定できる(Abe et al., 2011)。

5.ヒ素の動態解明

5.1 玄米ヒ素

わが国では食品からの総ヒ素の摂取量のうち8割以上が魚介類、海藻由来であるが、農産物ではコメからの摂取寄与が比較的大きいことがわかっている。コメのヒ素の国際基準値の検討は中断されていたが、第8回コーデックス食品汚染物質部会(2014)において検討が再開される予定である。このため、水稲作においてカドミウムの吸収を食品衛生法の基準値を超えないように抑えつつ、ヒ素の吸収を低減する技術の開発が求められている。

出穂前後の水管理を変えて栽培したイネの玄米総ヒ素濃度と総カドミウム濃度の間には負の相関があり、湛水期間が長いほど玄米ヒ素中のジメチルアルシン酸(DMA)の割合が高まった(Arao et al., 2009b)。玄米中の DMA は稲体内で無機ヒ素がメチル化されて生じるのではなく、土壌から吸収されたものに由来することが明らかとなってきた(Arao et al., 2011a)。玄米ヒ素濃度の品種間差を明らかにし、遺伝解析などを行った(Kuramata et al., 2011; Kuramata et al., 2013)。水田土壌におけるヒ素の溶出についても研究を進めている(Yamaguchi et al., 2011b)。また、コシヒカリ環1号は落水条件で栽培してもコメ中のカドミウム濃度は上昇しないため、これを利用したカドミウム・ヒ素濃度の同時低減栽培技術の開発に取り組んでいる。

5.2フェニル置換ヒ素化合物

茨城県旧神栖町で自然界には存在しないフェニル置換ヒ素化合物が地下水から検出されている。土壌・作物に含まれるこれらのヒ素化合物の定量方法を確立した。これにより環境中での化学形態の変化や作物への移行が明らかになり、有機ヒ素のリスク評価に役立てることができる(Baba et al., 2008)。土壌に添加されたジフェニルアルシン酸(DPAA)が、微生物の働きによってメチル化や脱フェニルにより形態変化する代謝経路を解明した(Maejima et al., 2007; Maejima et al., 2011)。イネはこれらのヒ素化合物を吸収するが、玄米へ移行するのは DPAA とメチルフェニルアルシン酸の2種類のみであり、活性炭施用により玄米への蓄積は抑制された(Arao et al., 2009; Arao et al., 2011b)。

荒尾知人(土壌環境研究領域長)
(現 研究コーディネータ)

引用文献リスト

農業環境技術研究所が1983年(昭和58年)12月に設置されてから2013年(平成25年)12月で30年を迎えました。そこで、30年間のさまざまな研究の経過や成果をふりかえり、これからを展望する記事 「農業環境技術研究所の30年」 を各研究領域長等が執筆しました。2014年2月から順次、掲載を進めています。

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