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農業と環境 No.177 (2015年1月1日)
独立行政法人農業環境技術研究所

東京農工大−MARCO合同国際ワークショップ「SWAT水田モジュール開発2014」 開催報告

独立行政法人農業環境技術研究所は、2014年11月18日から21日、東京農工大学 50 周年記念ホール(東京都府中市)において、東京農工大− MARCO 合同国際ワークショップ 「 SWAT 水田モジュール開発 2014 」 (TUAT-MARCO Joint International Workshop on Rice Paddy Module Development in SWAT 2014 - Development of a tool for sustainable rice production in Asia and world -) を、東京農工大学と共同開催しました。

流域レベルでの水・物質動態予測モデル SWAT(Soil and Water Assessment Tool)は、米国農務省農業研究局(USDA-ARS)によって開発された、流域管理シナリオ策定のためのツールであり、世界中でもっとも広く使用されている流域モデルです。アジアにおいても SWAT の適用が進みつつありますが、SWAT では湛水(たんすい)管理を行う農地が想定されておらず、水田ほ場〜流域レベルでの水管理等の実態をより反映した将来予測を行うためには、新たな水田モジュールの開発が必要となります。

本ワークショップは、水田モジュール開発に取り組む国内外の研究者が初めて一堂に会し、SWAT 水田モジュールの基礎部分の具体的設計と構築に向けた情報交換、議論を行うことを目的として開催しました。

参加者の集合写真
国際ワークショップの参加者

開催日: 2014年11月18日(火曜日)〜21日(金曜日)

開催場所: 東京農工大学 50周年記念ホール(東京都府中市晴見町3-8-1)

共催: 国立大学法人 東京農工大学 (TUAT)独立行政法人 農業環境技術研究所 (NIAES)

後援: 米国農務省農業研究局 (USDA-ARS)世界土壌・水保全機構 (WASWAC)

使用言語: 英語

参加者: 計46名 (日本26、ベトナム5、インドネシア4、米国3、イタリア2、インド1、中国1、台湾1、タイ1、アフガニスタン1) うち、農環研6名、農工大23名

プログラム:

11/18(火曜日)  会議登録

11/19(水曜日)

開会あいさつ

東京農工大学 副学長  國見 裕久
農業環境技術研究所 研究コーディネータ 八木 一行

基調講演 I Philip Gassman (アイオワ州立大学、米国)

一般講演

SWAT 水田モデル:現状と将来的なニーズ

渡邊 裕純 (東京農工大)

水田が水資源に与える影響評価のためのモンテカルロ法

Pierluigi Cau (サルディニア先端調査研究センター、イタリア)

日本における SWAT 水田モジュールの開発

坂口 敦、江口 定夫 (農環研)

ベトナムにおける SWAT 水田モデリング

Kim Loi Nguyen (ノンラム大学、ベトナム)

インドにおける SWAT 水田モジュールの開発

Balaji Narasimhan (インド工科大学マドラス、インド)

討論 I 異なる水田流域における SWAT の適用について

11/20(木曜日)

基調講演 II Jaehak Jeong (テキサス A&M 大学、米国)

一般講演

農業集水域における栄養塩動態に関するSWATモデル

Rui Jiang (北西 A&F 大、中国)

水田モジュールのためのSWATコーディング

Boulange Julien (東京農工大)

討論 II 水田モジュール基礎の構築について

総合討論 水田モジュール開発のゴール設定について

11/21(金曜日)

エクスカーション

東京農工大内外の水田ほ場および水田流域の視察など

会議の初日は、まず、米国アイオワ州立大の Philip Gassman 博士より、SWAT による水田システムのシミュレーションに関する典型的なアプローチ、手法の改良、将来の開発ニーズなどについて基調講演をいただきました。続いて、日本、イタリア、ベトナム、インドの研究者から、各国の水田農業の状況等に応じた SWAT の適用や改良について、5題の報告がありました。その後、異なる水田流域への SWAT 適用に関して活発な討論が行われました。

会議の2日目は、米国テキサス A&M 大学の Jaehak Jeong 博士より、水田モデリングのための基本的かつ具体的な枠組みに関する基調講演をいただきました。続いて、中国と日本の研究者から、栄養塩動態のモデル化および水田モジュールの具体的なコードなどについて、2題の報告がありました。総合討論では、SWAT 水田モジュール開発の具体的手順について活発な議論が行われ、今後のおおよその方針を決定するとともに、各国で観測データのある水田流域において、新たな水田モジュールを検証する方針を確認しました。

最終日のエクスカーションでは、東京農工大の水田ほ場や近郊の水田地帯を視察し、水田の用排水システムなどについて、活発な意見交換を行いました。

水田の用排水施設の見学(写真)
水田地帯でのエクスカーションのようす

江口 定夫 (物質循環研究領域)

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