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農業と環境 No.188 (2015年12月1日)
国立研究開発法人農業環境技術研究所

農環研研究職員に日本土壌肥料学会賞および日本土壌肥料学会奨励賞

農業環境技術研究所の研究職員が、次の通り、来年度の日本土壌肥料学会賞および日本土壌肥料学会奨励賞を受賞することが決まりましたので、お知らせします。

第61回 日本土壌肥料学会賞

土壌情報システムを利用した農業生態系の評価に関する研究

神山 和則

(農業環境インベントリーセンター 上席研究員)

業績概要

農業生態系では土壌・植物・大気などが相互に影響を及ぼしているため、農業生態系の研究には基盤となるさまざまな情報が必要です。しかし、基盤情報の整備には多大な労力と時間が必要なため、効率的な情報の整備手法が求められてきました。受賞者は土壌特性や空間分布等に関する情報を整理・管理するデータベースを構築するとともに、これらの情報を土壌有効水分分布図、農地土壌の放射性セシウム濃度分布図など特定の目的に対応した地図の作成や、ダイズ生産力の評価、農業に由来する窒素の水質への影響評価など農業生態系に関する評価に適用し、土壌情報の利用拡大に貢献しました。

第34回 日本土壌肥料学会奨励賞

農耕地における農薬・窒素動態に関わる土壌微生物の新機能解明

多胡 香奈子

(生物生態機能研究領域 任期付研究員)

業績概要

受賞者は、農耕地に散布した農薬の分解に関わる土壌微生物を研究し、有機リン系農薬であるフェニトロチオンを分解する主要な土壌微生物を見いだし、その分解機構を明らかにするとともに、この分解菌が農作物に多大な被害を及ぼすカメムシに共生して農薬抵抗性を付与することを証明しました。一方、窒素肥料などの窒素化合物を窒素ガスに変換する脱窒菌を直接顕微鏡下で単細胞培養する新規な分離方法を開発して、土壌で働く多様な脱窒細菌の分離に成功しました。

農耕地における温室効果ガス排出削減技術の国際的な活用に向けた基盤研究

南川 和則

(物質循環研究領域 主任研究員)

業績概要

顕在化が進む地球温暖化に対し、農業分野においても温室効果ガス排出削減の実現が強く求められています。そのためには、単に科学的知見を発信するだけでは不十分であり、基礎的な研究成果を国際的に活用するための方法論の開発が必要です。受賞者は、まず、水田からのメタン排出や地下水を経由した一酸化二窒素の間接排出についての基礎研究を行い、その成果が世界各国の実際の削減活動として活用されることをめざした支援ツールの開発研究に取り組みました。その成果は、チャンバー法によるガス観測スケジュールの提案が、削減活動を推進するための「計測・報告・検証(MRV)ガイドライン」に盛り込まれる見込みであるとともに、国際条約や各国の施策への寄与が期待されます。

日本土壌肥料学会賞は、「土壌・肥料・植物栄養学及びこれらに関連する環境科学に関する顕著な業績」 をあげた日本土壌肥料学会の会員に授与されるものです。また、日本土壌肥料学会賞奨励は、「土壌・肥料・植物栄養学及びこれらに関する環境科学の研究の進歩に寄与するすぐれた業績を会誌、欧文誌又はこれに準ずるものに発表し、更に将来の発展を期待しうる」 40歳未満の日本土壌肥料学会会員を対象とするものです。

授賞式と記念講演は、2016年9月に佐賀で開催される年次大会において行われます。

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