2015年4月現在

氏名

岡田 浩明(おかだ ひろあき) Okada, Hiroaki

所属・職名

生物生態機能研究領域主任研究員

現在の研究内容

線虫(nematode)の生態を研究しています。線虫というと寄生虫の1種で、動植物の体内で悪いことをするというイメージを持つ方が多いと思います。でも、線虫は多様です。寄生せずに自由生活を送る種もたくさんいます。そうした線虫を対象(材料)にして、現在次のような研究をしています。

1)地球温暖化が水田土壌の食物網に及ぼす影響の解明

FACE(開放形CO2濃度増加装置)を設置した水田圃場で調査し、土壌中の植物バイオマス、微生物、線虫群集からなる食物網に及ぼす50年後の温暖化(CO2濃度及び気温の増加)の影響を解明し、水田に生息する生物への温暖化の将来予測に役立てようとしています。

*なぜ線虫を調べるのか?

欧米や中国などでは、線虫の密度や群集構造を調べることで、温暖化や攪乱による生態系への影響を評価使用とする研究が盛んです。なぜ線虫なのでしょうか? 主な理由は、「そこに線虫がいるから」です。単純ですが重要なことです。線虫は陸域土壌のみならず湖沼や海洋の底にもたくさんいるのです。一方、プランクトンは水中にしか、トビムシやササラダニは土壌中にしかいません(例外はあります)。線虫は水陸を問わず生息するのです。他にも線虫には次のような利点があります。

(1)耕起や農薬散布などの攪乱にも強く、慣行管理の田畑でも高密度になること。一方、ミミズは耕起すると一般に激減します。

(2)少量の土壌からたくさん採れるので小規模の実験ができること。10gの土壌から20−200匹採れます。

(3)種ごとに植物食、細菌食、カビ食などに分けられるので、植物や微生物を通じた生態系内の養分やエネルギーの流れを反映するといわれること。植物や微生物のバイオマスをいちいち調べるのは大変です。

(4)線虫自体が水域では魚の、陸域ではダニやクマムシなどの餌となり、上位の食物網を支えること。

詳しくは(解説・総説など)の4や12の文献をご覧下さい。

他にも近年次のような研究を行っています(いました)。

2)畑における栽培管理様式が植物寄生性線虫の発生に及ぼす影響の解明

栽培管理を工夫することで、植物寄生性線虫による野菜の被害を抑えられるでしょうか?査読論文9、18などです。

3)DNAベースでの線虫群集分析法の開発

顕微鏡を使わずに群集構造を分析するための技術の開発です。解説・総説などの6、8、10などです。

4)個々の線虫種の特性や、線虫と他の生物との相互作用の解明

線虫の生態学を支える基礎研究です。査読論文20、22などです。

研究経歴

1991: 農水省東北農業試験場畑病虫害研究室研究員、翌年より線虫の研究を開始。
1998-2000: カリフォルニア大学デービス校線虫学科客員研究員。
2004: 農業環境技術研究所へ異動、現職。
2005: 農学博士号取得。

ReaD 研究者情報

http://jglobal.jst.go.jp/detail.php?JGLOBAL_ID=200901046641103550

今までの主な業績:2005年以降

(査読論文)

(総説・解説など。主なもののみ)

(著書)

(主な所属学会)

日本線虫学会、 日本土壌動物学会、 日本土壌微生物学会、 日本応用動物昆虫学会、 米国線虫学会、 欧州線虫学会