コメツブツメクサの利用によるシバ型草地の植生制御


[要 約]
アレロパシーを有すると考えられるマメ科外来植物のコメツブツメクサをシバ型草地の造成期および維持管理期に導入すると,春から初夏に繁茂し,広葉草本の発生を抑える。
[担当研究単位] 中国農業試験場 畜産部 草地飼料作物研究室
[部会名] 農業環境・農業生態,中国農業・畜産
[専 門] 生態
[対 象] 牧草類,野草類
[分 類] 研究

[背景・ねらい]
低投入で持続的に利用管理される野草地では,除草剤や化学肥料に依存せず,構成草種間の相互作用を活用した環境保全的な植生管理が求められる。コメツブツメクサ(Trifolium dubium Sibth)は,草丈20〜30pのマメ科の2年草で,春から初夏に黄色の花を付ける帰化植物であるが,アレロパシー等の抑草作用を有すると考えられている。そこで,暖地シバ型草地の植生管理と牧養力の向上をはかるため,コメツブツメクサの利用により不要植物を生物的に制御し,導入植物とシバを安定的に維持・管理する方策を検討する。
[成果の内容・特徴]
  1. シバ型草地に侵入したコメツブツメクサは,自然下種個体の発芽・定着によって,毎年晩秋から翌年の初夏まで出現する。なかでも4月〜6月期には旺盛な生育を示し,この時期の牧養力向上に貢献する。夏以降は自然に枯れて消失する(図1)。
  2. 4〜6月に採取したコメツブツメクサ地上部の水抽出物は,レタス幼植物の根の伸長を大きく阻害し,この作用は立枯れ状態の6月材料においても顕著に認められる。一方,ペレニアルライグラスに対する抽出物の作用は弱い(表1)。
  3. 春期にコメツブツメクサの多いシバ型草地では,オオアレチノギク,ハハコグサ,ヨモギなどを主体とする広葉草本において顕著に生育が劣り,夏期の現存量も明らかに少ない。シバおよびイネ科草本に対しては明らかな抑制作用が認められない(図2)。
  4. シバの移植時(10月)に10a当たり3sのコメツブツメクサを播種することによって,シバ等のイネ科草本の生育を阻害せずに,春から夏期の広葉草本の発生を抑制できることが温室条件下で実証できた。とくに,オオアレチノギク,オニタビラコ等のキク科草本に対する抑制効果が大きいのが特徴的である(図3)。
[成果の活用面・留意点]
  1. シバ型草地の植生制御と春期の牧養力向上,シバ型畦畔の雑草管理などに応用できる。
  2. 種子の入手が困難なため,自家採種が必要。播種の量と時期については一般の寒地型牧草に準ずる(秋期に10a当たり3kg)。また,コメツブツメクサの開花結実を阻害しないよう,春期の放牧圧を高めすぎないことが必要。

具体的データ


[その他]
    研究課題名:暖地シバ型草地におけるアレロパシー等の化学特性を利用した植生制御
    予算区分 :大型別枠(生態秩序)
    研究期間 :平成10年度(平成8〜10年)
    発表論文等:
       1)コメツブツメクサとシバの共存下における草本種の発生状況,日本雑草学会誌 43(別号) (1998)
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