クレオメに含まれる他感作用の強い揮発性物質の同定


[要 約]
 被覆植物40種から他感作用の強い植物を検索した結果,クレオメ(Cleome spinosa ) から最も植物生育阻害活性が強い物質が放出され,その主成分はメチルイソチオシアネートであった。この物質のEC100(100%生育阻害濃度)はレタスで18ppm(v/v)であり,これまで検索した天然揮発性物質中で最も強い活性を示した。
[担当研究単位]農業環境技術研究所 環境生物部 植生管理科 他感物質研究室
[部会名] 農業環境・農業生態
     総合農業・生産環境
     総合農業・作物生産
[専 門] 雑草
[対 象] 雑草類
[分 類] 究

[背景・ねらい]
 合成農薬を削減して休耕地や果樹園の雑草を制御するためには,他感物質を含む被覆植物の利用が有望と思われる。被覆植物約40種について,根や葉から放出される揮発性物質による他感作用を検索し,それらに含まれる植物生育阻害物質の同定を行った。
[成果の内容・特徴]
  1. 根から滲出する他感物質をプラントボックス法で,葉から溶脱する物質をサンドイッチ法で検索した。また,揮発性物質については,葉を2g切断して6穴マルチディッシュに入れ作用を検定する手法を開発してこれを用いた。その結果,根から出る物質の活性はムクナ,ヘアリーベッチ,クズ等が強かったが,葉から溶脱する物質と揮発性物質の活性は,クレオメ(セイヨウフウチョウソウ)が強かった(表1)。
  2. クレオメに含まれる揮発性他感物質をGC-MSおよびNMRで分析した結果,メチルイソチオシアネート(Methyl isothiocyanate,MITC)(図1)が同定された。
  3. 傷つけたときにクレオメ各部位から放出されるメチルイソチオシアネートの量を調べた結果,茎葉からの放出量は多く,根からは少なかった。種子を磨砕した場合は多量に放出された(表2)。
  4. クレオメを傷つけた時に放出される揮発性物質による生育阻害活性は,メチルイソチオシアネートの濃度で説明でき(図2),18ppm(v/v)の濃度でレタスの発芽・生育を完全に阻害した。
[成果の活用面・留意点]
  1. メチルイソチオシアネートは,ワサビやカラシナ等に含まれるアリルイソチオシアネートに類似した物質で,合成品が殺線虫剤・殺菌剤として農薬登録されている。
  2. クレオメは,休耕地,果樹園等における雑草や線虫制御のための植物としての利用が期待されるが,圃場での雑草・線虫抑制能力と農地周辺の植生に及ぼす影響をさらに検討する必要がある。

具体的データ


[その他]
研究課題名:被覆植物を利用した雑草防除技術の開発
予算区分 :環境研究〔持続的農業〕,経常
研究期間 :平成11年度(平成11〜15年度)
発表論文等:クレオメの他感作用と作用物質メチルイソチオシアネートの同定,雑草研究 38 (2000)
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