分散型データベースによる「微生物インベントリー」の構築とWeb上での公開


[要 約]
 分散型データベースにより「微生物インベントリー」を構築し,農業環境技術研究所所蔵の微生物標本,除草剤2,4-D分解菌および人畜植物共通の病原菌 Burkholderia 属細菌などのデータベースをWeb上で公開した。 種名などによるキーワードで複数データベースから情報が取得できる。
[担当研究単位] 農業環境技術研究所 農業環境インベントリーセンター 微生物分類研究室
[分 類] 技術

[背景・ねらい]
 微生物は,生態系におけるバランスの維持,環境修復および食品分野等で活用される一方で,人 畜及び植物の病原として知られており,同一微生物がこれら機能を有する場合もある。しかし,これらの情報については必ずしも整理されていない。そこで,多くの微生物情報を網羅的に整理して発信することを目的として,「微生物インベントリー」を構築して,農業環境技術研究所が所蔵する微生物標本の画像,除草剤2,4-D分解菌,さらに,人畜植物共通病原性ならびに環境修復等の機能を有する微生物に関する情報をWeb上で公開する。
[成果の内容・特徴]
  1. 分散型データベース検索システム(国立遺伝学研究所宮崎ら作成)により「微生物インベントリー」を構築し,Web上で公開した(http://www.naro.affrc.go.jp/archive/niaes/inventry/microorg/index.html)。複数のデータベース内にある関連情報を,指定した種名などのキーワードによりすべて表示できる(図1図2)。現時点で対象とするデータベースは,以下の農業環境技術研究所所蔵微生物標本,2,4-D分解菌およびBurkholderia属細菌で,いずれも本邦初公開である。
  2. 1880年代から農業環境技術研究所微生物標本館に収集・保存されているサビ菌,クロボ菌等の微生物標本画像(図3)を中心に,寄主植物や採集場所などに関わる情報(448件)を公開した。微生物種名や寄主植物名などで検索できる。
  3. 2,4-Dの分解菌に関わる情報(161件)を公開した。菌株名,種名,分解遺伝子名および初出文献名などで検索できる。分解遺伝子の塩基配列や研究状況を知ることができる。
  4. 人畜植物共通の病原性ならびに環境修復などの多様な機能を有するBurkholderia属細菌に関する情報(49件)を公開した。農学,工学,医学分野の情報を初めて網羅的に整理している。菌株名,種名,採取場所,人畜および植物に対する病原性等で検索できる。
[成果の活用面・留意点]
  1. 微生物のバイオセーフティ指針リスト(日本細菌学会作成)も加えており,種ごとのバイオセーフティーレベルを簡単に検索できる。
  2. 本サイトから公開中の「日本野生植物寄生・共生菌類目録」や「日本産糸状菌類図鑑」などのデータベースにもアクセスできる。

[その他]
 研究課題名 : イネ科植物における常在微生物の所在,特性及び遺伝情報のデータベース化とイ
        ンベントリーのためのフレームの構築
        (主要イネ科植物に常在する微生物相の分類,同定及び機能解析並びにインベン
        トリーのためのフレームの構築)
 予算区分  : 運営費交付金
 研究期間  : 2003年度(2001〜2005年度)
 研究担当者 : 對馬誠也,月星隆雄,吉田重信,篠原弘亮,長谷部亮,酒井順子,小川直人,
        土屋健一

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