農業環境技術研究所刊行物研究成果情報平成19年度 (第24集)

普及に移しうる成果 3

ゼロエミッションを目指したもみ殻ガス化残渣の有効利用

[要約]
水田農業におけるゼロエミッション(廃棄・排出物ゼロ)を目指して、もみ殻ガス化残渣を有効利用するために水稲用農薬の系外流出防止技術を開発しました。この技術を組み込むことで、CO2削減などに寄与する米生産システムが開発できます。
[背景と目的]
地球温暖化や化石燃料の高騰を背景に、バイオマスエネルギーの開発が活発になり、もみ殻を燃料として利用するガス化発電技術が実用化段階にあります。しかし、この技術では、エネルギー回収後に残渣として大量の炭化物(もみ殻ガス化残渣)が排出されるため、その処理が大きな課題となっています。一方、水稲用農薬は、河川に流出して生態系への悪影響が懸念されており、炭化物の田面処理が流出を抑制することが明らかになっています(農業環境研究成果情報:第19集)。そこで、両者の組み合せによる稲作を機軸としたバイオマス資源を有効利用するシステムの構築を目指して、もみ殻ガス化残渣について、物性及び農薬の吸着特性を解明するとともに、それを利用した水稲用農薬の系外流出防止技術の開発を目的としました。
[成果の内容]
  1. 従来廃棄していたもみ殻ガス化残渣を、水田に施用(リサイクル)することにより、バイオマスエネルギーの利用に農薬の系外流出防止技術が組み合わさるだけでなく、ケイ酸肥料としての水稲の登熟歩合や食味の向上、さらに、二酸化炭素を固定炭素として水田に還元するため地球温暖化防止への寄与も期待されます。(図1)。
  2. もみ殻ガス化残渣は、炭素分20〜25%、ケイ酸70〜75%を含有した炭化物であり、比表面積が170〜240m2/gで細孔直径40Å付近の細孔容量が大きい。
  3. もみ殻ガス化残渣の粒子を1.2〜2.5mmに調整し、施用量を30g/m2にして、水田に施用すると、除草剤の処理量を半減しても、除草効果はほとんど低下しませんでした(表1)。
  4. この条件で、田面水中の除草剤濃度を大幅に低下(慣行区の70%減)させることができるとともに、除草剤に続いて施用された茎葉処理型殺菌剤も吸着し、田面水に落下した殺菌剤の濃度を大幅に低下(約40%減)させました(図2)。このことにより、農薬の水田系外流出を防止することができます。
リサーチプロジェクト名:有機化学物質リスク評価リサーチプロジェクト
研究担当者:有機化学物質研究領域 高木和広、勝部英一(北川鉄工所)、高梨誠三郎(欣膳)
発表論文等: 1) 高木ら、特願2007-189817 号(2007)
       2) 高木、高梨、特許第4014988 号(2007)
       3) 高木、高梨、特願2004-357706 号(2004)
       4) 高木、植調、Vol.38、No.7: 9-15 (2004)

図表

図表

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