農業環境技術研究所刊行物研究成果情報平成19年度 (第24集)

普及に移しうる成果 9

広域的な栽培暦情報を集積し、共有するためのWebデータベース

[要約]
栽培暦を保存するデータベースをインターネット上に構築しました。これを利用すると、世界各地の栽培暦を取得することができ、様々な研究に利用することができます。また、自らが調査した栽培暦を登録し、公開することができます。
[背景と目的]
育種や普及、地域研究などを通して記録・作成される栽培暦は、地域における作物の成長や管理の実態を時間を追って記録したものなので、現在や過去の農業活動の貴重な時空間ファクトデータです(図1)。しかし、表記方法が多様なうえ、共通の保存場所も存在しなかったために、これまで有効に活用されてきませんでした。そこで、インターネット技術を利用して、栽培暦を広く収集・保存し、利用しやすい形で提供するデータベースを構築しました。
[成果の内容]
 このデータベースは、インターネット上のホームページに構築されています。利用者は、作物名や国名、栽培年次、緯度経度範囲などから、登録されている栽培暦を検索することができます。検索を実行すると、条件に合致した栽培暦の内容とその適用範囲の図が表示されます(図2)。検索結果(栽培暦と適用範囲の地理情報)は、ファイルの形でダウンロードすることもできます。
 このデータベースでは、栽培暦を、「概要」、「数値化規約(記載事項に対応付ける数値や対応方法などの定義)」、および「数値化された暦」とに分割して保存します。栽培暦の情報をこのように分割することにより、様々な書式の栽培暦を記録することが可能となりました。その結果、比較する栽培暦の情報が単純な数値の表となるので、多数の栽培暦の統計的処理や書式が異なる栽培暦の比較も容易となります(図3)。
 また、このデータベースには、インターネット上から栽培暦を登録する機能がありますので、公開できるものであれば、研究者や研究機関は自らが所有する貴重な栽培暦をこのデータベースを利用することにより、散逸することなく保持できるとともに、広く一般に公開することができます。さらに、特定の栽培暦を利用者を限定して公開する機能も持っていますので、将来的に公開する予定のものであっても、当分の間は公開範囲を特定の研究グループ内にのみ限定し、研究終了後に一般に公開することもできます(図4)。
リサーチプロジェクト名:農業空間情報リサーチプロジェクト
研究担当者:生態系計測研究領域 大野宏之、坂本利弘、石塚直樹、大気環境研究領域 鳥谷均

図表

図表

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