農業環境技術研究所刊行物研究成果情報平成19年度 (第24集)

主要研究成果 9

カドミウム非汚染水田における年間カドミウム収支

[要約]
つくば市水田を調査対象としたカドミウム収支計算の結果、肥料・降水・灌漑水による3.2g ha-1-1の供給、排水・玄米の収穫による0.8g ha-1-1の持ち出しとなりました。土壌カドミウム濃度の上昇は1.6μg kg-1-1と推定され、土壌総カドミウム濃度(0.35mg kg-1)と比較すると非常に小さいことがわかりました。
[背景と目的]
コーデックス委員会において精米中のカドミウム(Cd)の国際基準値(0.4mg kg-1)が合意されました。農林水産省によるCd非汚染地域のコメの全国実態調査で玄米Cd含有量は平均して0.06mg kg-1ですが、非汚染水田における年間Cd収支の評価はされておらず、コメのCd含有量に与える影響は不明です。ここでは、水稲を栽培する非汚染水田における土壌Cd濃度の年間変化を推定することを目的としました。
[成果の内容]
 つくば市の水田(100m×54m、土壌総Cd濃度0.35mg kg-1)を調査対象としました。灌漑水および排水の量は、三角堰を設置して水位の変動をモニタリングし、水位―流量の回帰式により水量を求めました。灌漑水および排水の採水を水稲栽培期間中の降水の無い日を選び、1回/週の以上の頻度で合計24回行い、試料中の溶存態及び懸濁態Cd濃度を分析しました。降水中Cd量は2003.5-2005.11のつくば市の降水中Cd濃度を測定し計算しました。Cdの下方浸透量は、2002年の土壌溶液試料中(水田の周囲5地点で合計8回採水)のCd濃度と浸透水量から計算しました。肥料中のCd濃度は日本の水田で用いられるリン酸肥料の平均的な値である20mg kg-1P2O5を用いて計算しました。
 1年間のCd収支は、肥料、降水、灌漑水により3192mg ha-1のCdが供給され、排水、玄米の収穫、下方浸透により792mg ha-1のCdが持ち出され、土壌へのCd負荷量は2400mg ha-1でした(図1)。Cdの供給源としては肥料の寄与(2000mg ha-1)が最も大きく、作土量を1500t(厚さ15cm、100m×100m、仮比重1)とすると、水稲栽培1回あたりの土壌中Cd濃度の上昇分は1.6μg kg-1と推定され、土壌総Cd濃度と比較すると非常に小さいことがわかりました。
リサーチプロジェクト名:重金属リスク管理リサーチプロジェクト
研究担当者:土壌環境研究領域 荒尾知人、箭田(蕪木)佐衣子、川崎晃、連携推進室 齋藤貴之、
      大気環境研究領域 間野正美、永井秀幸(現:(独)農業・食品産業技術総合研究機構)、濱田洋平(筑波大)

図表

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