水田への尿素の施肥に伴うアンモニアの揮散を調べました。田面とイネ(品種:日本晴)を覆う風洞を用いて大気−水田間のアンモニア交換フラックスを測定しました(図1)。
代掻き時に基肥として50kg N ha-1を全層施肥(田面に肥料を散布したのち作土全層に混合する施肥法)した場合のアンモニアの揮散率は2.1%と低い値でした(表1)。これは、全層施肥により尿素を土に混ぜ込むとアンモニアの揮散を抑える効果があるためと考えられます。
しかし、一度に多くの尿素を表面施肥(田面に肥料を散布したまま放置する施肥法)すると、水田のアンモニア性窒素が一時的に過剰となり揮散しやすくなります。追肥1回目(中干し前に窒素換算で30kg
N ha-1 を表面施肥)に伴うアンモニアの揮散率が21%に達した一方、追肥2回目(出穂前に窒素換算で10kg N ha-1を表面施肥)に伴うアンモニアの揮散率は0.5%ときわめて低い値でした(表1)。
イネは通常大気中のアンモニアを吸収するはたらきを示すものの、追肥の直後でアンモニアが過剰な条件では大気へとアンモニアを放出することがわかりました(図2)。
これらの結果は、大気−水田間の窒素交換および窒素循環の広域評価に重要な知見を提供するとともに、追肥を少なくすることにより水田からのアンモニアの揮散を抑制できることを示しています。