農業環境技術研究所刊行物研究成果情報平成22年度 (第27集)

普及に移しうる成果 2

生物多様性に関する情報を収集、蓄積、提供するためのWEB版農業景観調査情報システム(RuLIS WEB)

[要約]
農業生態系における生物多様性の変化を国土全体で評価することを目的に、生物多様性観測情報を効率的に収集、蓄積し、生態系の構造と関連づけて解析、評価、情報提供するためのWEB版農業景観調査情報システム(RuLIS WEB)を開発、公開しました。
[背景と目的]
農業生産と環境保全の両立を図るため、環境保全型農業や他の様々な施策が推進されています。しかし、農村では人間活動による生態系の変動が激しいこと、生物多様性観測情報の蓄積が不十分なことから、生物多様性に関する客観的評価が困難です。そこで、農業生態系における生物多様性観測情報を効率的に収集し、その変化を国土全体で評価するための調査情報システムのWEB版(RuLIS WEB)を開発し、公開しました。
[成果の内容]
  1. RuLIS WEB(URL;http://rulis.dc.affrc.go.jp/rulisweb/)では、農業景観調査情報システム(農業環境研究成果情報第22集)のフレームを踏襲し、全国の農業生態系区分と地点ごとの生物多様性観測情報をWeb-GIS(地理情報システム)上でリンクし、それらを表示、提供(ダウンロード)することができます(図1)。RuLISはRural Landscape Information Systemの略です。
  2. 各種の生物多様性観測情報をWEB上で入力可能です(図2)。調査地点の位置(緯度経度)をWEB画面上から簡単に取得し、農業生態系区分や他の環境情報と関連づけることができます。利用者登録によりデータ入力が可能となり、入力したデータは公開、限定公開、非公開の別を選択できます。さらに、本システムでは種ごとの分布だけでなく、ある地点の生物群集(植物群落などの種組成)のデータも格納できます。
  3. 現在、RuLISWEBにはRuLISモニタリング地区の植生や鳥類分布データのほか、全国を対象とした植物分布や小動物の分布データが蓄積されています(表1)。これらのデータから必要な部分を検索・抽出して、出力することが可能です(公開データのみ)。
  4. 本システムにより、研究者、行政、企業、農業者、市民団体など様々な主体が生物多様性データを蓄積、比較することが可能になります。それにより環境保全型農業などの効果を評価できるとともに、GEO-BON(地球観測における生物多様性観測ネットワーク)など国際的な生物多様性関連の取り組みに対し、農業生態系の情報を発信することが可能になると期待されます。

本研究の一部は、農林水産省委託プロジェクト研究「流域圏における水循環・農林水産生態系の自然共生型管理技術の開発」及び「農業に有用な生物多様性の指標及び評価手法の開発」による成果です。またデータ整備には環境省環境研究総合推進費(D-1008)を用いています。
リサーチプロジェクト名:水田生物多様性リサーチプロジェクト
研究担当者:生物多様性研究領域 山本勝利、楠本良延、三上光一、生態系計測研究領域 岩崎亘典


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