農業環境技術研究所刊行物研究成果情報平成22年度 (第27集)

主要成果 34

オサムシ科標本情報閲覧システム

[要約]
農業環境技術研究所が所蔵する昆虫標本のうち、近年減少傾向にあるオサムシ科昆虫グループの標本情報が閲覧できるシステムを開発しました。標本ラベルの閲覧だけでなく、採集地の地図投影、データダウンロードも可能なため、様々な研究に利用できます。
[背景と目的]
農業環境技術研究所昆虫標本館には、多数の昆虫標本が収蔵されています。これら標本コレクションの利用促進を目指し、減少傾向にあるオサムシ科グループ(56種1674個体)を対象に、ラベル閲覧、採集地点の地図投影、データダウンロード全てを実現する総合的な閲覧システムを開発しました(図1)。大部分が地上徘徊性であるオサムシ科は一般に環境指標性が高く、自然環境の評価や、保全生物学の分野で利用することが期待できます。
[成果の内容]
  1. 生物標本は、過去の分布情報として利用することも可能なため、近年は生物多様性の変遷評価などにも活用されるようになってきました。しかし、標本情報を分布情報として活用するためには、1)標本を採集した位置情報の付与、2)データ記述フォーマットの統一化という2つの大きな問題を解決する必要があります。
  2. そこで、農業環境技術研究所昆虫標本館が収蔵している土生コレクションのうち、近年減少傾向にあるオサムシ科グループ56種1674個体を対象に、標本ラベルに記述された採集地の地名、住所を読み取り、緯度経度の位置情報を付与しました。そして付与した位置情報を利用し、標本の採集地点を無償で利用できるインターネット上の地図であるGoogle Mapへ投影しました(図2)。
  3. 次に、ラベル情報を記述するフォーマットを、国際規格の一つであるDarwin Coreに準拠した形式で統一しました(図3)。さらにラベル情報を、様々な研究で利用されているテキスト形式およびXML形式でダウンロードできるようにしました。ラベル情報には学名、採集年、採集者、標本館の収蔵ID等、標本に関するあらゆる情報が含まれています。
  4. これらによって、ラベル情報の閲覧、採集地情報の地図投影、ラベル情報のダウンロードを単一のシステムで実現する総合的なシステムが完成しました(図1)。このシステムから得られる情報は、自然環境の評価や、保全生物学の分野で利用されることが期待できます。

リサーチプロジェクト名:環境資源分類リサーチプロジェクト
研究担当者:農業環境インベントリーセンター 大澤剛士、吉武啓、栗原隆、吉松慎一、中谷至伸、 生物多様性研究領域 安田耕司
発表論文等:標本情報閲覧システム(http://habucollection.dc.affrc.go.jp/


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