農業環境技術研究所プレスリリース

プレスリリース
NIAES
平成22年4月13日
独立行政法人 農業環境技術研究所

農環研が農耕地土壌に関する情報をインターネットで公開
―全国各地の農耕地土壌の分布や性質が簡単に調べられます―

ポイント

・ 農耕地土壌の種類ごとの分布がわかるデジタル農耕地土壌図を提供。

・ 土壌図で土壌の種類を選ぶと、土壌断面の写真や解説が表示されます。

・ 全国の土壌調査地点の調査票を閲覧できます。

概要

独立行政法人農業環境技術研究所(農環研)は、全国各地の田畑にどのような土壌が分布しているかを簡単な操作で表示できる「土壌情報閲覧システム」を、インターネットで公開します。

このシステムでは、土壌の分布がわかるデジタル農耕地土壌図のほか、各土壌についての説明、土壌断面の写真や模式図を使用した土壌解説資料、土壌調査地点の断面記載表と分析データを表示できます。

インターネットを利用して、誰でも全国各地の農地に分布する土壌の種類と性質を調べることができ、農作物の栽培計画や施肥管理、研究開発、教育活動などに利用できます。

予算: 農業環境技術研究所運営費交付金研究 (2009-2010)

問い合わせ先など

研究推進責任者:

(独)農業環境技術研究所 茨城県つくば市観音台3-1-3

理事長   佐藤  洋平

研究担当者:

(独)農業環境技術研究所 農業環境インベントリーセンター

任期付研究員  農学博士  高田 裕介

TEL 029-838-8272

広報担当者:

(独)農業環境技術研究所 広報情報室 広報グループリーダー

田丸  政男

TEL 029-838-8191
FAX 029-838-8299

電子メール kouhou@niaes.affrc.go.jp

開発の社会的背景と研究の経緯

わたしたちの普段の生活で目にすることの少ない足下の土壌は、多種多様な生物の生活の場として、また、養分や水や温室効果ガスなどさまざまな物質の貯留や移動に重要な役割を担っています。とくに、農耕地の土壌には、安全な食料を安定して供給するという非常に身近で重要な役割があります。最近では、土壌のもつこれらの役割は、土壌が有する公益的機能として注目されています。

わが国には多様な土壌が分布し、土壌の色だけでも赤・黄・青・灰・茶・白・黒などと多彩です。土壌が有する公益的機能(作物生産機能、炭素貯留機能、養分や水などの循環機能、水・大気浄化機能、生物多様性の保全機能)は、土壌の種類やその性質によって大きく異なります。そのため農環研では、全国各地のさまざまな土壌をその性質によって区分し(土壌の分類)、それぞれの土壌がどこに分布するかを明らかにしてきました(土壌図の作成)。その結果は土壌の種類ごとに公益的機能を最大限に発揮させるための土壌管理や栽培・施肥管理などに利用されています。

農環研が日本全国の農耕地土壌を研究する中で作成したデジタル農耕地土壌図や土壌に関する情報を体系化して公開することで、農作物の栽培や施肥管理、研究開発、教育活動などへの寄与が期待されます。さらに、これまで目にする機会が少なかった農耕地の土壌を身近に感じていただくため、簡単な操作で土壌を調べることができるシステム 「土壌情報閲覧システム( http://agrimesh.dc.affrc.go.jp/soil_db/ )」 (システム更新作業のためサービス休止中 [2013年2月20日]) (略称: Ai3 Soil Map; アイスリー・ソイルマップ) を作成しました。

研究の内容・意義

1.土壌分類解説のページ(図1図2)では、わが国の農耕地にどのような種類の土壌が分布しているかを解説しています。さまざまな土壌標本の写真を掲載し、土壌の多様性を視覚的にも分かりやすく解説しています。また、調査地の景観、全国的な土壌の分布状況がわかる土壌分布図、水田・普通畑・牧草地・樹園地ごとの土壌分布面積表を掲載しているので、それぞれの土壌が分布する場所が一目でわかります。

「土壌分類解説」ページ: 日本の農耕地には多様な土壌が分布している。「詳細表示」をクリックするとその土壌の種類について詳細な情報が表示される。

図1 わが国の農耕地に分布する土壌を紹介するページです。農耕地の土壌の多様さが一目でわかります。また、土壌の種類ごとに詳細な情報を表示できます(図2へ)。

「詳細表示」ページ: 日本の農耕地で特徴的な「黒ボク土」の断面の写真と詳細な解説、全国的な分布地域など。黒ボク土はおもに火山灰を母材とし、排水がよい条件で母材の風化とともに有機物が集積するため、表層が黒くなる。

図2 土壌の種類ごとの解説とともに、土壌標本の写真、土壌分布図と面積表が表示されます。

2.土壌図のページでは、全国の市区町村名から見たい場所を選択して、1992年および2001年の農地部分の土壌図を表示できます(図3)。また、土壌図をクリックすると土壌解説資料のページが開き、全国各地の田畑に分布する土壌の種類とその性質を調べることができます(図4)。こうした情報から、田畑の土壌の種類をもとにした栽培や施肥管理を行うことができます。

1992年か2001年の農耕地土壌図を選んだ後、県・市町村名を選択してデジタル土壌図を表示できる。

図3 1992年か2001年版の農耕地土壌図を選択し、全国の市区町村から調べたい地域の土壌図を選択できます。図は2001年版の土壌図を選択し、茨城県つくば市を選択して拡大表示した画像です。

土壌図の中をクリックするとその地点の土壌について断面写真や解説資料が表示される。

図4 土壌図の中をクリックすると対応する土壌解説資料が表示されます。

3.基準土壌断面データベースのページでは、全国7115調査地点の土壌断面記載表を表示できます(図5図6)。このデータベースには、土壌分類の基準となる土壌断面の調査情報が収録され、土壌の多面的機能の評価、大学等での土壌学の教育素材、調査事業等での土壌調査のための予備調査や調査地点選定などに利用できます。

「土壌断面データベース」のページで土壌の種類を指定すると、対応する調査実施地区が地図上に表示されます。地区をクリックすると調査地点の表が表示されます。

図5 土壌断面データベースのページでは、調べたい土壌の種類を選択すると該当する調査実施地区が地図上に表示されます。調査実施地区を選択すると調査地点のリストが表示されます。

表から調査地点を選ぶと、「土壌断面記載表」のPDFファイルが表示されます。

図6 調査地点を選ぶと土壌断面記載表のpdfファイルを表示できます。

今後の予定・期待

農環研では、デジタル農耕地土壌図を利用して、全国の農耕地での作物養分の変動・蓄積、炭素貯留機能、水質浄化機能、外来植物侵入リスクなどを研究・評価しています。また基準土壌断面データベースを用いて、農業生産・環境の両側面から利活用しやすい、新たな土壌分類体系を構築しています。

これらの研究・評価の結果はこの閲覧システム上で今後公開する予定です。これらの研究・評価の結果をもとに、市町村単位での農耕地の作物生産機能や環境保全機能などをこれまで以上に高い精度で推定でき、国、都道府県や民間企業が農業環境を評価したり、保全対策を検討したりする際に活用できます。

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