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NIAES
平成28年3月31日
国立研究開発法人農業環境技術研究所

農環研が 『世界土壌資源報告:要約報告書』 の日本語訳を刊行

ポイント

・ 国際連合食糧農業機関(FAO)から 2015 年 12 月に英語で出版された 『世界土壌資源報告:要約報告書』 を日本語訳し、農業環境技術研究所報告として刊行しました。

・ 地球上の生命と文明の基盤である土壌資源の重要性、世界各地における土壌劣化の現状、および土壌を保全するために社会が取るべき方策についてまとめられています。

概要

1. 国立研究開発法人農業環境技術研究所(農環研)は、国際連合食糧農業機関(FAO)と土壌に関する政府間技術パネル(ITPS)により2015年12月に出版された 『世界土壌資源報告:要約報告書』 を翻訳しました。

2. 本報告書は、世界 60 ヶ国から 200 名を超える研究者が参加してまとめられた600ページを超える報告書の要約版であり、土壌資源の重要性を解説するとともに、世界各地における土壌劣化の現状を科学的に評価し、その対策を提言しています。

3. 本報告書は、将来の食料生産と生態系保全のためには、持続可能な土壌管理がきわめて重要であることを科学的根拠とともに示しています。そして、そのために社会が取るべき施策の指針として広く活用されると期待されます。

4. 本日本語訳は、農業環境技術研究所報告第35号に収録され、印刷物として配布されるとともに、農環研Webサイト(http://www.naro.affrc.go.jp/archive/niaes/sinfo/publish/bulletin.html) から入手できます。

問い合わせ先など

研究推進責任者:

国立研究開発法人 農業環境技術研究所 茨城県つくば市観音台 3-1-3

理事長   宮下 C貴

研究担当者:

国立研究開発法人 農業環境技術研究所 研究コーディネータ

八木 一行  TEL 029-838-8430

広報担当者:

国立研究開発法人 農業環境技術研究所 広報情報室

広報グループリーダー   小野寺 達也

E-mail kouhou@niaes.affrc.go.jp

(参考)『世界土壌資源報告:要約報告書』 の表紙

Status of the World's Soil Resources: Technical Summary(表紙)

(参考)『世界土壌資源報告:要約報告書』 の日本語訳刊行にあたって

農環研では、水田から排出される温室効果ガスに関して 1980 年代から研究を実施しており、多くの本書は、国際土壌年(2015 年)の世界土壌デー(12月5日)に、国際連合食糧農業機関 (FAO: Food and Agriculture Organization of United Nations) と土壌に関する政府間技術パネル (ITPS: Intergovernmental Technical Panel on Soils) により出版された 「Status of the World's Soil Resources(SWSR) -Technical Summary」 を、国立研究開発法人農業環境技術研究所の有志により翻訳したものである。サブタイトルに 「要約報告書(Technical Summary)」 とあるように、本書は、600 ページを超える 「全体報告書(Main Report)」 に記載された主な知見をとりまとめた要約版の日本語訳である。「全体報告書」の作成には、世界 60 ヶ国から 200 名を超える研究者が参加し、ITPS を中心に、約2年の期間を費やして精力的な作業が進められた。我が国からも 10 名の研究者が執筆協力者として名を連ねている。

序文にもあるとおり、本 「世界土壌資源報告」 は、土壌にかかわる問題に対し、国際社会が協調して取り組むために設立された地球土壌パートナーシップ (GSP: Global Soil Partnership) と、その政府間科学パネルであるITPSの最初の成果のひとつである。そして、本報告書は、土壌と土壌に関わる問題を地球規模で包括的に評価した、これまでにない初めての報告書であり、さまざまな地球規模での環境問題との悪戦苦闘を続けている現在の国際社会に対し、科学的見地からの示唆を与える貴重な資料のひとつとして評価され、活用されるべきものである。

この日本語訳を出版するにあたり、本書が、我が国の研究者、技術者、政策担当者だけでなく、全国各地での土壌管理に係わる方々に、地球規模での土壌の問題に関する最新情報を提供することにより、我が国の豊かな土壌資源を保全するための一助になることを切に願う。さらに、本書に示された問題解決策を進めるために、国際的な重要性を高めている GSP と ITPS の活動に対する、ご関心とご協力を願ってやまない。

(参考)『世界土壌資源報告:要約報告書』の目次

日本語訳出版にあたって

序文

土壌に関する政府間技術パネル(ITPS)からのキーメッセージ

1. はじめに

2. 地球規模の土壌変化を引き起こす要因

3. 土壌と食料安全保障

土壌侵食

養分不均衡

土壌炭素と生物多様性の損失

土地転用(ランドテイク)と土壌被覆

土壌の酸性化、汚染および塩類集積

土壌の圧密と湛水

持続可能な土壌管理

4. 土壌と水

水食、地表水質の調節および水系の健康

汚染物質の濾過、形態変化および地下水質

水量の調節と洪水

5. 土壌と気候調節

土壌有機炭素の損失

土壌からのメタン発生

土壌からの一酸化二窒素発生

6. 土壌と人間の健康

土壌汚染

変化傾向(トレンド)

7. 土壌と生物多様性

8. 土壌の状態に関する地域的な変化傾向

サハラ砂漠以南のアフリカ

アジア

ヨーロッパおよびユーラシア

ラテンアメリカおよびカリブ

近東および北アフリカ

北アメリカ

南西太平洋

南極大陸

9. 土壌機能への脅威に関する全球的な要約

10. 土壌政策

教育および啓発活動

モニタリングと予測システム

市場への土壌情報の提供

適切な奨励制度と規制

世代間の公平性の確保

地方・地域・世界の安全保障を支える

相関性と因果関係の理解

分野横断的な問題

11. これからにむけて

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